| 詳報 | 丸山茂樹/著 共生と共歓の世界を創る─グローバルな社会的連帯経済をめざして 社会評論社刊

丸山茂樹/著『共生と共歓の世界を創る─グローバルな社会的連帯経済をめざして』が2017年10月刊行となりました。現代世界の格差と貧困問題を解決するための貴重な示唆を与える1冊です。

「共生社会」「共歓の世界」を創る試みは全世界ですでに始まっている。

新しい文化・芸術、暮らし方、生き方の創造を担い、地域を、国を、世界をネットワークするソーシャルデザイナーたちの運動と理論をめぐる手引き書。

A5判224頁並製 定価=2,200円+税
ISBN978-4-7845-1561-5


なぜ「共生と共歓の世界」か?

丸山茂樹

 

この本は現代社会を変革する道筋を探求する一助になればと思って書きました。

内容の第1は、2013年以来筆者が友人たちとともに深く関わってきたグローバル社会的経済フォーラム(Global Social Economy Forum=GSEF〈ジーセフ〉と呼称)の内容を紹介することです。GSEFのスタートになった「ソウル宣言」とこれを支持する有志が「ソウル宣言の会」をつくりネットワークを張ってきました。ここには簡潔ながら世界大に広がった格差社会、環境破壊、不公正な国際関係などに対する具体的かつ実践的な改革方向と活動事例が示されています。

第2は、GSEF創立のイニシアティブをとってきた韓国の朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長や韓国の市民運動を理論的に牽引してきた元聖公会大学教授で現在ソウル市教育監として活躍している曺喜昖氏(チョ・ヒヨン)などが、どのようにして新しい変革の道筋を開拓しているか紹介します。これまでの国際連帯組織は先進国と云われる欧米中心に組織されてきましたが、GSEFはアジアから発信されました。その意義は少なくないと思います。そして筆者のソウル大学留学経験を踏まえて日本と韓国の人びとはもっと本音で互いを知り合い、学び合いたいという私の持論も述べます。

第3は、筆者が日本の社会的連帯経済の先進事例だと考えている地域の活動についてのレポートです。限られた範囲に過ぎませんが現地に足を運んで見聞したことの記述です。これらは筆者が所属してきた参加型システム研究所、東京グラムシ会、日本協同組合総合研究所(JC総研)、日本協同組合学会、ロバアト・オウエン協会などの活動のなかから得たものです。

第4は、エコロジーやフェミニズムなど新しい社会運動と呼ばれる思想と運動について、アメリカ訪問の経験を踏まえて、グラムシやポランニーが切り拓いてきた社会変革について、試論を述べることにいたします。この点については私の非力を補っていただく意味も込めて、畏友、小原耕一氏の論考「グラムシ『市民社会』論を考える―ブラヴォイ論文を手懸かりに」を掲載させていただきました。同氏に深く御礼申し上げます。


著者略歴
丸山茂樹(まるやま しげき)1937年愛知県名古屋市で生まれる。父親は岐阜県恵那市、母親は鹿児島県徳之島出身。参加型システム研究所客員研究員。ロバアト・オウエン協会理事。「ソウル宣言の会」コーディネーター。日本協同組合学会会員。生活クラブ生協連合会に勤務、国際担当を経て1999年~2001年韓国ソウル大学へ留学。韓国聖公会大学講師(協同組合論、社会運動史)。韓国農漁村社会研究所理事、エントロピー学会元共同代表、東京グラムシ会元代表、荒畑寒村・石堂清倫氏等の運動史研究会『運動史研究』全17巻(三一書房)の編集執筆に参加。

主な共編著・訳書
「協同組合運動の新しい波」(三一書房)、「いのちと農の論理」(学陽書房)、「協同組合の基本的価値」(家の光協会)、「協同組合論の新地平」(日本経済評論社)、「協同組合の国際化と地域化」(筑波書房)、「生きているグラムシ」(社会評論社)、「グラムシの思想空間」(社会評論社)、「東アジアにおける市民社会の形成」(専修大学出版局)、「協同の力で復興を」(変革のアソシエ)、「社会的経済って何?」(社会評論社)、P.エキンズ「生命系の経済学」(お茶の水書房)、P.デリック「協同社会の復権」(日本経済評論社)等多数。


■目 次


序 章  この本の目的と内容――なぜ「共生と共歓の世界」か?

第1章  甦るA.グラムシとK.ポランニー ―1人の夢は単なる夢にすぎないが、皆が見る夢は実現できる

第1節 絶望か希望か、それは虚妄か

第2節 国際会議に登場したアントニオ・グラムシ

第3節 躍り出たポランニー、グラムシの継承者たち

第2章  GSEFの誕生と発展――新しい社会変革の国際ネットワーク

第1節 モントリオールGSEF2016

第2節 30人余の市長らが壇上に―政治的制度的な約束

第3節 ソウル・モントリオール・モンドラゴン・バマコの市長の対話

第4節 “まち”の持続可能な発展戦略と実践事例

第5節 国際機関の専門家たちの公開討論

第6節 GSEFの仲間C.I.T.I.E.Sが発足とモントリオール宣言

〈資料1〉ソウル宣言――新たな協働の発見
〈資料2〉グローバル社会的経済協議会(GSEF)憲章
〈資料3〉GSEFモントリオール宣言

第3章  朴元淳ソウル市長の誕生とイニシアティブ

第1節 朴元淳市長の登場

第2節 ソウル市の「協同組合活性化支援条例」制定と政策展開

第3節 協同組合と地方自治体の連携

第4節 「社会的経済基本条例」制定と「2014グローバル社会的経済アソシエーション」

第5節 新自由主義の継続か、社会的連帯経済への大転換か?

〈資料4〉ソウル特別市社会的経済基本条例
〈資料5〉カナダ・ケベック州の「社会的経済法」

第4章  海鳴りの底から――日本の先進事例

第1節 岩手県宮古市・重茂漁協の復興への取り組みと特徴点――協同精神で漁船の共同利用による復興と6次産業化の実践

第2節 重茂漁協の復興への歩みに思う

第3節 福井県池田町――過疎地における潜在資源の顕在化

第4節 山形県・置賜自給圏推進機構の出発とその意義――内発的な連帯による「地方創生」運動の登場

第5節 ワーカーズ・コレクティブの現在と未来

第6節 神奈川県の福祉クラブ生協の参加型福祉と共育活動

第5章  アメリカの新しい波

第1節 新しい社会運動の登場

第2節 ワーカーズ・コレクティブの発見

第3節 アメリカ市民運動の存立基盤

第6章  陣地戦と知的・モラル的改革の時代

第1節 市民社会とヘゲモニー

第2節 陣地戦の時代へ

第3節 サバルタンと有機的知識人

第4節 循環型社会を実現するために

第5節 国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」

第7章  M.ブラヴォイ論文に寄せて 

小原耕一 グラムシ「市民社会」論を考える――ブラヴォイ論文を手掛かりに

第1節 歴史の竃としての市民社会

第2節 社会学的マルクス主義における〈社会〉

第3節 レーニンの理論的貢献とグラムシへの継承

第4節 グラムシ:市民的社会の政治的諸機能

第5節 崩壊したソ連に「社会」は存在したか?

第6節 日本の「市民社会」の未成熟性

終 章 新しい世界変革は実践されつつある

第1節 始まっている未来創造の営み
第2節 何が連帯と前進を拒んでいるか?
第3節 プラットホームとネットワークの構築へ
第4節 まとめ

 

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