| 詳報 | 柳沢哲哉/著『経済学史への招待』社会評論社刊

学説とその時代背景を学び、古典への関心を喚起する


定価=本体2,300円+税 A5判並製223頁
2017年4月刊、2018年11月第2刷発行

 


目 次


プロローグ

第1章 経済学誕生以前

1-1 経済学の語源
1-2 プラトンの経済思想
1-3 アリストテレスの経済思想
1-4 聖書の経済思想
1-5 トマス・アクィナスの経済思想
1-6 マキャヴェリの近代的人間観
1-7 ホッブズの社会契約論

第2章 前期重商主義の経済思想

2-1 重商主義の時代
2-2 二つの重商主義
2-3 トマス・マン
2-4 重商主義の貨幣論

第3章 後期重商主義の経済思想

3-1 ジェームズ・ステュアートの『経済学原理』
3-2 人口論争
3-3 『原理』の構成
3-4 ステーツマン
3-5 農工分離プロセス
3-6 人為的調和論
3-7 貨幣数量説批判

第4章 重農主義の経済思想

4-1 コルベール主義
4-2 ケネーと自然的秩序
4-3 経済表の諸前提
4-4 経済表のしくみ
4-5 経済表の総括
4-6 ケネーの経済政策

第5章 市場社会論の系譜

5-1 社会契約論から市場社会論へ
5-2 マンデヴィルの経済思想
5-3 スミス『道徳感情論』
5-4 消極的正義
5-5 意図せざる結果の論理

第6章 古典派経済学の成立

6-1 『国富論』の構成
6-2 富裕の一般化論
6-3 分業論・交換論
6-4 貨幣論
6-5 自然価格論
6-6 高賃金論
6-7 利潤率低下論
6-8 蓄積論
6-9 貯蓄=投資論
6-10 資本の投資順序
6-11 商業の秩序形成機能
6-12 政府の役割
6-13 租税4原則
6-14 俗説的解釈

第7章 古典派経済学の展開

7-1 マルサスの時代
7-2 マルサスの平等主義批判
7-3 人口原理
7-4 リカードウと地金論争
7-5 穀物法論争と穀物モデル
7-6 投下労働価値説と分配論
7-7 労働者の生活習慣
7-8 比較優位説

第8章 歴史学派の経済学

8-1 後発国の経済
8-2 自由貿易と国民経済学
8-3 国民的生産力
8-4 リスト以後のドイツ歴史学派
8-5 社会政策学会
8-6 ドイツ歴史学派と日本

第9章 マルクスの経済思想

9-1 資本主義批判の潮流
9-2 マルクスの時代
9-3 唯物史観
9-4 『資本論』の構成
9-5 商品生産
9-6 労働力商品と産業資本
9-7 機械化の進展とその帰結
9-8 マルクス経済学の変容

第10章 限界革命

10-1 新古典派経済学とは何か
10-2 方法論的個人主義と最適化仮説
10-3 限界革命とジェヴォンズ
10-4 限界効用理論
10-5 交換理論
10-6 労働理論
10-7 ジェヴォンズ以後の効用理論の発展

第11章 ワルラスの経済学

11-1 土地国有化論と経済学の方法
11-2 交換の理論
11-3 生産の一般均衡論

第12章 ケンブリッジ学派の経済学

12-1 新古典派経済学とマーシャル
12-2 『経済学原理』の構成と部分均衡論
12-3 均衡の時間区分
12-4 組織と有機的成長
12-5 マーシャルからピグーへ
12-6 効用の個人間比較
12-7 ピグーの3命題
12-8 新厚生経済学

第13章 1930年代の経済学

13-1 企業の変容
13-2 ケンブリッジ費用論争とロビンソンの不完全競争論
13-3 独占的競争から寡占理論へ
13-4 屈折需要曲線とフル・コスト原則

第14章 ケインズの経済学

14-1 ケインズの時代
14-2 ケインズの批判対象
14-3 『一般理論』の経済像
14-4 有効需要論
14-5 流動性選好説
14-6 ケインズの社会哲学
14-7 『一般理論』体系とIS・LMモデル
14-8 ケインズ経済学の発展
14-9 新古典派総合への変容
14-10 ケインズ批判の諸潮流

エピローグ


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本書プロローグより

経済学史は経済学の歴史を扱う学問である。過去の学説を学ぶ意義はどこにあるのか? このような疑問を抱く方も多いであろう。経済学史にはいくつかの役割がある。本書が目指しているのは、入門としての経済学史である。ある学問に入門するのに、しばしばその歴史を学ぶのが効率的であると言われる。その学問が何を問題にしてきたのか、どのような視角から分析対象を考察してきたのか、そして前の段階の学説をどのように継承・批判してきたのか。こうした発展プロセスをたどることで、その学問の対象や方法を理解すること、すなわち学問の見取り図を描くことが可能となる。この見取り図を提供するのが学問の歴史の重要な役割である。

とりわけ経済学の場合には、このような見取り図を頭に入れておくのが有益である。もし標準的な学説が定まっている分野であれば、少なくとも入門レベルで複数の学説を学ぶことはない。しかし、経済学の場合は、学部レベルの講義でも異なる学説に依拠して教えられている場合が多い。それゆえ、見取り図のどの辺りに位置する学説なのかを意識して学ぶ必要がある。多くの経済学部で経済学史が開講されているのは、こうした事情による。

本書の特徴をあげておこう。経済学はそれぞれの時代の経済や社会の問題に応えることで発展してきた。経済学史を学ぶ場合には、時代背景とその時代の学説との関係を理解することが不可欠である。高校で学ぶ世界史の知識を前提とすることなく、時代背景を理解できるように心がけた。これが本書の特徴の一つである。もう一つの特徴は、原典からの引用を数多く入れたことである。必ずしも分かりやすくない引用もあえて掲載した。それは経済学者の声に触れることで、少しでも古典への関心を喚起したいと考えたからである。

著者


柳沢哲哉(やなぎさわ てつや)1962年群馬県生まれ。東北大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学 埼玉大学人文社会科学研究科(経済系)教授 担当経済学史 / 共編著『マルサス人口論事典』昭和堂、2016年、共編著『経済学の座標軸』社会評論社、2016年、共著『経済倫理のフロンティア』ナカニシヤ出版、2007年

 

投稿者: 社会評論社 サイト

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