構造改革政権 ─長洲神奈川県政20年の再評価とその歴史的意義

地方創生の原点は長洲神奈川県政にある!
それは地域主権(ミュニシパリズム)の先駆者であった。
いま明かされる、県政20年(1975〜1995年)の再評価と歴史的意義。

目次
まえがき─刊行にあたって
構造改革への挑戦 ─長洲神奈川県政の20 年を検証する
序説 長洲県政の軌跡 ─長洲県政の2期8年を振り返る
第Ⅰ部 長洲県政を再評価する
─構造改革政権の課題と展開を中心に
第1章 長洲県政の誕生 ─長洲・久保体制の形成
第2章 長洲県政当初の課題認識 ─構造改革を目指して
第3章 長洲県政の「過去との闘い」と「未来への闘い」
─構造改革の枠組み
第4章 頭脳センター構想からKSP建設へ
─戦後初の<発明の事業化=KSPモデル>創造
第5章 組織改革の展開
─人を活かし、時代ニーズに対応した組織再編・新設
第Ⅱ部 KSPモデルの創生と展開
第1章 KSPを軌道に乗せるまで
第2章 KSPインキュベート事業の17 年 ─実績と課題
第3章 神奈川科学技術アカデミー/KASTの15 年
第4章 R&Dの一つの提案 ─KASTのTrial
第5章 神奈川高度技術支援財団/KTFの15 年
第6章 「KSPモデル」の創生・展開・再構築
─日本型サイエンスパークとして
第7章 KSPプロジェクトの推移とKSPモデル(補論)
第8章 21 世紀のサイエンスパーク戦略
第Ⅲ部 長洲県政の再評価と歴史的意義
提起1 「新神奈川宣言」の歴史的意義
─<構造改革>をどう引き継ぐか
提起2 久保孝雄先生の業績と課題
提起3 ミュニシパリズムと地方の時代
巻末資料
史料1 神奈川が変われば日本が変わる─新神奈川宣言
長洲一二
史料2 『模倣から創造へ』この20 年の歩み(1968~1988)
飯沼和正
史料3 市民派政治学者・篠原一先生を偲ぶ
─「革新の革新」をめざす長洲県政を支えた学者ブレ─ン
あとがき 長洲神奈川県政20 年の再評価を!
─<構造改革>の視点を再構築し、地域主権の時代へ!
執筆者・発言者等紹介
索引

著者:久保孝雄、原田誠司、井上良一、「長洲県政」研究会編著
A5判 並製 288頁 本体価格2300円+税
ISBN 978-4-7845-1764-0

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貶められた司令塔 ─危機に立つ巨大組織(JA) 求められる新基軸

農業・農村の衰退と食の危機
その底にあるJA(農協)問題の深淵に迫る!

 

農協運動の司令塔の役割を果たしてきた中央会制度の廃止が決まってからから10年になる。中央会制度は、総合農協制度や准組合員制度とともに戦後の農協の発展を支えた3大制度の一つであり、今回その一角が崩れた。

農協は独善的・排他的でありながら依存性の高い組織であり、中央会制度の崩壊は制度の依存を超えた制度の悪用(政治的利用)による。

中央会制度廃止の原因究明と総括が行われないのにははっきりした理由がある。2007年の参議院選挙以来全中がとってきた自民党との密室議論による政治戦略と地域協同組合運動路線に原因があり、究明・総括を行えば、全中は自らの運動や政治戦略そのものを否定することになるからである。

いま、日本の農業は「令和の米騒動」に象徴されるように、極めて脆弱な生産体制のもとにある。これまで農協は、組織発展にとって都合のよい信用・共済事業の拡大に重きを置いてきたが、今後は農協本来の農業振興に全力を挙げるべきである。とくに生産段階にまで踏み込んだ農業経営にも取り組んでいく必要に迫られている。

それは農協が、残された総合農協と准組合員制度に依存するだけでなく、この制度を真の農業振興のために創造的に活用・発展させていくべきことを意味している。

目次
はじめに
序章
第1章 農業と農協の推移と課題
第1節 農業の推移と課題
1.農業生産活動の主要指標   2.「食料・農業・農村基本法」の改正    (1)基本法見直しに当たっての基本的な考え方    (2)具体的施策   3.主要課題    (1)農業の産業としての使命と農協の役割(農協理念の再構築)    (2)農協の農業生産への関与
第2節 農協の推移と課題   1.組織の現状と課題    (1)組織の現状    (2)組合員数の動向    (3)課題   2.事業の現状と課題    (1)経済事業    (2)信用事業    (3)共済事業   3.経営の現状と課題    (1)現状    (2)課題 第2章 農協改革の経過〜制度問題で完敗
第1節 農協法の改正(農協改革第1期)2014年5月14日〜2015年8月28日
1.「規制改革実施計画」の閣議決定
2.自己改革案の策定
3.中央会制度の廃止(経緯)
4.農協法の改正
第2節 自己改革の推進(農協改革第2期)2016年4月1日〜2021年3月31日   1.自己改革の推進    (1)自己改革の意味    (2)創造的自己改革   2.経済事業改革と信用事業の代理店化    (1)経済事業改革    (2)信用事業の代理店化   3.PDCA管理 第3章 中央会制度  第1節 中央会制度の創設   1.創設の背景
2.制度上の地位と性格
3.事業の内容
(1)組合の組織、事業および経営の指導
(2)組合に関する教育および情報の提供
(3)組合の監査
(4)農政活動
(5)全国中央会の県中央会に対する指導連絡事業
第2節 中央会制度の廃止
1.法制度上の変質
2.事業内容の変質
3.制度廃止の原因
4.制度の評価
5.整促7原則
第3節 今後の中央会活動
1.現状と課題
2.桎梏
3.目指すべき方向
第4章 准組合員制度
第1節 問題の所在
1.准組合員とは
2.双子の兄弟
3.員外利用制限の回避
第2節 取り組みの経過
1.組合員の判断と参議院選挙
2.副作用
第3節 今後の課題と対策
1.「意思反映」の意味
2.地域組合論の限界と新たな対応   3.取り組みの課題    (1)意識改革〜准組合員の無関心と対応姿勢の転換    (2)試される農協の本気度   4.対策    (1)准組合員の性格付けと新たな農協理念の確立    (2)准組合員の組織化    (3)准組合員に対する議決権の付与 第5章 農協改革の総括・教訓  第1節 自主・自立の農協運動   1.協同組合第4原則   2.中央会制度の悪用   〈外聞〉中央会制度崩壊の顛末〜前史と最終攻防    (1)山田選挙    (2)徹底主義    (3)自民党のJA全中支配    (4)中央会制度の廃止(山場の攻防)
(5)農協運動と政治
(6)自己改革と政治
第2節 新たな農協論の確立
1.職能組合論と地域組合論
2.職能組合論・地域組合論の止揚
第3節 無力だった協同組合論
1.なぜ中央会監査は廃止されたのか
2.協同組合とは
3.協同組合原則
4.「95年原則」の意味と改定の視点
(1)定義
(2)価値
(3)7つの指針
第6章 農協運動の転換
第1節 新たな農協理念の確立
1.農業の基本価値
2.「JA綱領」の改定
第2節 みどりの協同活動の展開
1.基本コンセプト〜4つの戦略目標   2.主要具体策    (1)組織運営    (2)事業運営
(3)経営
あとがき

〈コラム〉
「2軸論」
「萬歳会長一人の辞任劇」
「農協政策の転換」
「整促7原則」の意味
「中央会の経営指導」
「奥原氏による中央会の評価」
「要請活動」
「付帯決議〜地域インフラ論」
「農協の准組合員対策」
「自己改革と優良事例」
「地下足袋の小枝」
「農協改革最大の山場〜たった数日の結論」
「究極の自己都合と制度依存」
「山田議員3選出馬の意味」
「協同組合のそもそも論」
「第7原則:地域社会への係りについて」
「農業の基本価値」
「集中と分権」

著者:福間莞爾
A5判 並製 320頁  本体価格2300円+税
ISBN 978-4-7845-2428-0

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望月清司の市民社会思想

 日本の市民社会論がいわば日本における社会思想史研究の対象となる一方、目を見張る経済成長を果たし、急激な社会変容を経験しつつある中国では、近代化に伴う新たな社会認識が模索されているようで、恐らくはその一環としてであろうが、2009年には望月清司の主著『マルクス歴史理論の研究』(岩波書店、1973年)が中国語に翻訳され(訳者:韓立新清華大学教授)、その後も紆余曲折はありながら、望月市民社会論が議論の対象となっている。なお平田清明や廣松渉の著書も翻訳がなされている。

 本書では、この望月清司の市民社会思想の形成過程を追跡すると同時に、その輪郭を明らかにしつつ、彼が禁欲的に多くを語らなかった固有の社会認識(唯物史観との訣別、彼にとっての近代の意味)にまで立ち入って、それを日本の市民社会思想史の中に位置付けたいと思う。

(本書「序文」から)

目次
序文
第一章 望月市民社会論の累重的形成
はじめに
一. 平田市民社会論における歴史認識
二. 望月市民社会論の胚胎過程
三. 望月市民社会論の成立過程
四. 望月市民社会論の展開過程
第二章 望月市民社会論再考
はじめに
一. 望月市民社会論の累重性
二. 望月清司の研究回顧
三. 中世における市民社会
四.『要綱』依存関係史論理解の独自性
五. 日本固有の市民社会論の意義
第三章 日本における市民社会論の系譜
はじめに
一. 第二次大戦中の市民社会論︱高島善哉、大河内一男、大塚久雄︱
二. 自覚論の超克︱内田義彦
三. 市民社会論の新展開︱平田清明と望月清司︱
四. 分業・交換関係における意識形成への一考察
第四章 内田義彦と社会科学
はじめに
一. 大河内一男と高島善哉における「正義」
二. 内田義彦における利己心と正義の位置
三.「市民」主体の意識形成の「場」
第五章 日本における市民社会論への批判
はじめに
一. 山之内靖の市民社会論
二. 山之内靖の市民社会論批判
三. 望月清司の近代と第三世界論への視点
四. 市民社会論的方法と視座への批判
第六章 望月清司・人と思想
はじめに
一. 望月清司の少年期・青年期
二. 研究者としての日々
三. 望月清司の市民社会思想
あとがき
索引

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コミュニケーション学の誕生──W.シュラム学派から『思想の科学』井口一郎へのリレー

新聞記者、新聞学者として学問、精神、生活の遍歴をたどった井口一郎の生涯を軸に、民間の研究団体「思想の科学研究会」、それを主宰した哲学者・鶴見俊輔、会の雑誌『思想の科学』と協力しながら日本社会での「コミュニケーション学」が波及するまでの論考集。

目 次

第一章 井口一郎新聞学の青春期
コミュニケーション研究史上の落丁
第二章 建国大学時代の井口一郎
新聞学から弘報論へ
第三章 井口一郎と建国大学の同僚達 王道楽土か日本脱出か
地政学と農本主義の癒着のはざまで 55
第四章 ラスウェルと「マスコミ」用語の日本登場
井口一郎と思想の科学研究会の戦後の貢献
第五章 「新しい新聞学」の誕生と「マスコミ」論の影響
井口一郎に始まる戦後のアメリカ種研究の移入
第六章 井口一郎による「コミュニケーション」理論の
移植と定着  1949 年以降の出版活動を焦点に
第七章 すべて、それ(プロパガンダ)は
戦争から始まった 133
第八章 プロパガンダ研究とFBIS の成立
コミュニケーション学胎動の土壌

近日発売
A5判上製 188頁     本体2600円+税
ISBN978-4-7845-2814-1