| 詳報 | 長浜功/著 「大志」の細道 十年前の最終講義 社会評論社刊 2019年7月12日発売

人間と文化を対象とする教育は、夢と希望を語れる世界である。その志を持続して歩み続けたひとりの大学教師の三十余年の足跡を読む。


「大志」の細道 十年前の最終講義 SQ選書17
長浜 功/著
定価=本体1800円+税 ISBN978-4-7845-1745-9 四六判並製200頁


はしがき(全文)


本書は私が十年前に大学を定年になったとき、書斎で書き綴った「最終講義」の原稿です。と言っても私は実際には最終講義というセレモニーはやりませんでした。講義の最終日はいつもの通り自分で作った教材そして講義で使ったすべての教材を一枚のCDにして教室で配っただけです。

ただ、三十有余年の思いは忘れられません。それでこの思い出と足跡をまとめたのが本書ですが、出版に至らず机の引き出しに眠ったままでした。そして人生の締めくくりを迎えて文書の整理をしていて、この原稿だけは自分の記念に残そうと一部だけ私家版を印刷して手元に置いていました。

思い起こせば小学校から宿題も満足にしなかった不出来な悪童が、あるとき「ボーイズビーアンビシャス」という言葉を聞いて未知の空想の世界を夢見るようになって一心不乱に勉強をはじめ、この言葉を残した大学に進もうと考えたのは中学時代、そして高校時代に「都ぞ弥生」とい美しい寮歌がこの大学の学生寮「恵迪寮」と知ってから私はまっしぐらに北海道大学をめざしました。そしてなんとか入学し、そして入試より難しいと言われた恵迪寮にはいることができたのです。

そしてまがりになりにも大学の教壇に立ち、三十有余年。その経験と思い出を綴ったのが本書です。タイトルの「大志」はもちろんクラーク博士の言葉です。クラーク博士は招かれた札幌農学校に数ヶ月しか滞在しませんでしたが、その影響は学生たちに計り知れない影響をあたえました。学生を紳士として扱い多くの優れた人材を残しました。その遺志を継いで新渡戸稲造、内村鑑三、有島武郎などと言った近代日本を築き上げた人々が札幌農学校を支え育てていったのです。

こういう偉大な足跡を知るようになるのは中学生のころでしたが、「ボーイズビーアンビシャス」という言葉を聞いて何か心が勇み立つような気持ちになりました。そして「都ぞ弥生」という歌を知ってから、いつかは北海道大学というところに行ってみたいと思いました。そしてその願いが叶えられたとき、私は希望に満ち満ちて北大の門をくぐったのでした。

そして「恵迪寮」にも入れました。「都ぞ弥生」に憧れていた少年はこの寮で「大志を抱いて」大学生活を送りました。その「大志」とはたいした深い意味はありませんでしたが、とにかく夢を失わないように過ごすことができました。その一端は本文に残してあるとおりです。「大志」と言うより「小志」だったかもしりません。

しかし、寮では人生を論じ合い、大学では学問を論じ合うことができました。恵迪寮と北海道大学は私にとって人生の教師になってくれました。
教鞭を執ってからもこの「大志」は私の座右の銘として忘れることはありませんでした。

しかし、言うは易く行うは難し、です。本書で綴った話は「大志」とはかけ離れたものでした。私が歩めたのはその大道とかけ離れた細道にすぎなかったと思います。

憧れの大学で「大志」を学び、恵迪寮で育てられた私にとっての本当の恩師は「大志」と「人の世
の尊き国ぞと憧れ」を教えてくれた真の「大学」だったのです。

その意味で私が辿れたのはせいぜい「大志の細道」だったのではないかと思っています。そしてこの本はその私がよちよちとあるき続けた人生の細道の記録です。

二〇一九年七月一日
長浜 功


筆者紹介■長浜 功(ながはま いさお)
1941 年北海道生まれ、北海道大学教育学部、同大学院修士、博士課程を経て上京、法政大学非常勤講師等を歴任後、東京学芸大学常勤講師、以後同助教授、教授、同博士課程連合大学院講座主任、2007 年定年退職(濫発される「名誉教授」号は辞退)

目 次


はしがき

第一章 講義編

1 教育 ❶ 人の発見
2 教育 ❷ 人を残すというこ
3 教育 ❸ 希望を与えるということ
4 教師と即戦力
5 教育基本法再考
6 こどもにこそ本物を
7 国際化と日本語
8 壊れゆく漢字文化
9 インターネットと生涯学習
10 微少の法則
11 水と環境
12 芸術と人生
13 己の思想
14 大学というところ

第二章 実践編

1「興正学園」
2 青年サークル研究
3 クリーニング学級
4 市民活動サービスコーナー
5 成人障害者の学習
6 コーヒーハウス
7 サンデーコーヒーハウス
8 「戦争を知らない世代の歴史講座」

第三章 戦争と教育

1 放浪
2 就職まで
3 教育研究の空白
4 昭和史の研究
5 戦争体験
6 戦争責任
7 教育学者の戦争責任
8 教師の戦争責任
9 歴史と責任

第四章 文化と学問

1 柳田國男研究
2 柳田の教育論
3 柳田の学問論
4 宮本常一研究
5 学問の偏り
6 旅と学問
7 時局と学問
8「無知の相続」

第五章 教育と芸術

1 教育科学の敗北
2 生活綴方
3「山びこ学校」
4 ある体験
5「学校革命」
6 教育芸術論
7 ある芸術家

補章 雑記帳

1 「一本の道」
2 大学入試問題
3 潔い失敗
4 茶人・利休
5 仮想著作集
6 映画音楽
7 ケッヘル488番
8 函館の街
9 五重塔
10 ミニコミ
11 高島野十郎

新編あとがき


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