| 詳報 | 鈴木裕子/著 天皇家の女たち 古代から現代まで 社会評論社刊

〈吾平津媛(神武天皇の妃)、額田部王女(推古天皇)から皇太子妃雅子、愛子内親王まで〉

A5判並製・400頁 定価=本体3,500円+税
ISBN978-4-7845-1570-7

天皇制は、男系家父長制原理に貫かれた性差別、階級差別、民族差別、身分差別、障碍者差別、異質な思想や人物を排除する差別のシステム・体系である。たとえ、天皇に女性がなったとしても、天皇制の差別装置としての機能は変わらず、差別と排除の「伝統」も持続するであろう。

目 次


はしがき 天皇制への疑問─人間の平等原理に反し、人を差別化する
序 章 上代、古代の天皇家と女性たち
第1章 古代における女帝(女性天皇)の登場  
1 最初の女帝─額田部王女(推古天皇)
2 宝王女(皇極・斉明天皇)─母と子(中大兄皇子)で王権への集中形態を図る
3 女帝持統の血脈・血統保持への執着
4 「中継ぎ」女帝─元明・元正両天皇
5 異例の女性皇太子から天皇へ─孝謙(称徳)天皇
第2章 キサキ(後宮)制度の確立  
1 後宮官員令の整備
2 桓武天皇の純血政策
3 皇統・血脈の保持と宮家創設
4 「明治」宮廷にも続く後宮制度
第3章 采女─天皇に「献上」された女たち  
1 采女の起り
2 天皇の「私物」扱い
3 後宮制度に組み込まれる
第4章 藤原氏の女たちと天皇家  
1 藤原氏の隆盛は、天皇家との姻戚関係
2 藤原氏と天皇家の「抱合」関係
3 藤原氏による摂関政治
4 「延喜・天暦の治」の実像と虚像
第5章 院政時代・武家の時代と天皇
1 院政時代と皇族の女たちの抗争─准母立后制との絡みで
2 平氏政権の栄華と没落
3 王権と遊女・傀儡・瞽女・舞女・歩き巫女たち─王権の多情性
4 室町幕府と天皇
5 戦国時代と天皇
6 豊臣秀吉が覇権を掌握
7 徳川時代における天皇と二人の女帝

第6章 王政復古・明治維新・天皇  

1 欧米列強の開国要求
2 孝明天皇の「公武一和」・攘夷論、倒幕には踏み込まず
3 将軍家茂、孝明天皇の死で討幕派が勢いづく
4 幼帝を神輿に下級武士、公家たちが権力簒奪

第7章 近代天皇制と皇后像  

1 「近代皇室」の誕生へ
2 近代天皇制の確立、美子皇后と元田永孚
3 美子皇后の儒教的女性観・家族主義的女性観
4 天皇制国家に寄りそう女子教育と軍国の鑑
5 皇室典範と皇室制度の整備
6 「新しい皇室」像の創出─節子皇后の時代へ
7 「慈善恩賞の府」としての皇室像の創出
8 節子皇后・皇太后の「救籟」事業
第8章 植民地朝鮮における「内鮮融和」策と「内鮮結婚」 
1 李王世子垠と梨本宮方子の政略結婚=「内鮮結婚」
2 武断統治から文化統治へ
3 梨本宮方子の生いたち
4 李垠と梨本宮方子の結婚後、国策として「内鮮結婚」導入
第9章 裕仁皇太子と母節子皇后  
1 裕仁親王の誕生と生いたち
2 皇太子裕仁親王への君主教育と軍事教育
3 欧州歴訪、摂政に就任
4 「神がかり」する節子皇后、神功皇后への思い入れ
第10章 「日満親善」結婚─愛新覚羅溥傑と嵯峨浩の国策結婚  
1 「日満親善」で国策結婚した嵯峨浩
2 嵯峨侯爵家の長孫として誕生
3 恵まれた環境で青春を謳歌
4 「満州国」皇弟溥傑の生いたちと清朝復辟の悲願
5 「日満親善」結婚の内実
6 新婚生活、「満州国」での生活
7 「満州国」崩壊・「逃避行」・日本帰国
8 溥傑の撫順戦犯管理所生活と慧生の自死
9 浩、北京へ行く
第11章 裕仁天皇と母節子皇太后
1 裕仁皇太子と母皇后の確執、弟宮たちの母后観
2 一九二三年という年─文明史的危機の時代相を写す
3 大正天皇の死去と節子皇太后
4 裕仁・良子天皇夫妻の円満な家庭生活
第12章 天皇と戦争、皇后・皇族妃たちの戦争協力
1 恐慌と戦争の時代へ
2 民衆運動・社会運動への弾圧が強まる
3 中国への干渉と軍事発動
4 戦局の拡大と裕仁天皇
5 「非常時」が呼号される
6 「国体明徴」運動と軍ファシズムへの急展開
7 軍部の増長を抑えられず
8 中国全面侵略戦争と天皇
9 天皇の戦時指導
10 「玉体安泰」「皇統保持」への切なる思い
11 良子皇后─「国母」陛下として畏怖・畏敬される
12 大日本婦人会創立─天皇の叔母、東久邇宮聰子妃が総裁
第13章 敗戦と天皇・天皇家の女たち  
1 敗戦直前直後の裕仁天皇と「皇統保持」「国体護持」
2 敗戦、皇統保持・天皇制護持をめぐって
3 天皇像のイメージ転換を図る─軍人天皇から平和天皇への作りかえ
4 良子皇后の福祉・ご仁慈の演出・工作
5 「民主的家族」像としての天皇家へのイメージ戦略
6 日本国憲法と裕仁天皇
7 外からの〈民主主義〉革命と〈天皇制民主主義〉
8 広く流通した「聖断神話」─歴史修正主義がスタート
第14章 象徴天皇制と天皇家の女たち  
1 象徴天皇制と裕仁天皇
2 象徴皇太子夫妻による象徴天皇制づくり
3 象徴皇太子妃・美智子妃の登場─現代天皇家の誕生
4 裕仁天皇の再登板・戦争責任問題
5 象徴天皇制の行方─「国体」的天皇観の台頭
6 天皇家の妃たちの役割
7 現行皇室典範「改正」をめぐる論議

あとがき


著者より読者へ

わたくしたちは、日本独特といわれる天皇制というシステムに見えないうちに呪縛されている。日の丸・君が代問題での教員処分、天皇制批判のタブーなど、思想表現行動の自由も酷く狭まって来ている。

いまや天皇・天皇制を批判することは、タブー扱いされ、時に戦闘右翼の直接暴力に曝されている。天皇制は、人びとの命さえ奪いかねないものとして機能する。象徴天皇制こそかつての神権天皇制に代わる「国体観念」と化している。海外においては、天皇はソブリン(元首)扱いされ、国内外の旅行においては厳戒態勢が敷かれ、最大限、丁重な待遇がなされる。天皇を敬愛するための学校教育の強化、宮内庁ホームページによると天皇家の「私的」と思える皇室祭祀さえ、「公務」の一端とされ、神道による権威化が進められる。

象徴といえども天皇制はいまもなお、わたくしたちを呪縛する存在である。憲法の平等原理と相反する制度である。以上のことを確認し、戦争を放棄し武器を持たない真の平和主義と、天皇制民主主義の垢を払った真の民主主義社会と、共和主義社会をつくるため、今後の事態を注視し、天皇家・天皇制の歴史を辿るために、この書を上梓したく思った次第である。

著者略歴 
鈴木裕子(すずき・ゆうこ)1949年東京生まれ、早稲田大学院文学研究科修士課程日本史学専攻修了。労働運動史・組合史編纂・執筆に携わる一方、女性史・社会運動史研究に従事。各地の大学での非常勤講師を経て、現在、早稲田大学文学学術院教員。早稲田大学ジェンダー研究所招聘研究員。

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