| 詳報 | 社会学者の見たマルクス─その生涯と学説 フェルディナント・テンニース/著 片桐幸雄/訳 社会評論社刊 2019年3月刊

1887年に『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』を上梓し、新たな歴史発展理論を提唱したドイツ社会学会の重鎮が1921年に刊行したカール・マルクス論。

四六判並製 276頁 定価=本体2300円+税
ISBN978-4-7845-1862-3
2019年3月刊


フェルディナント・テンニース(1855-1936)

一八七二年にシュトラスブルク大学入学、さらにイエナ大学、ベルリン大学等で学び、テュービンゲン大学で古典言語学の学位を取得。その後、政治哲学、社会問題に関心が向かい、労働組合や共同組合運動に積極的に参加し、フィンランドやアイルランドの独立運動を支援した。

一九一三年キール大学の哲学・社会学の正教授に就任。また、ドイツ社会学会の会長を一九〇九~三三年にわたって務めた。一九三二~三三年には、ナチズムと反ユダヤ主義を公然と批判したため、キール大学名誉教授の地位を剥奪された。

著書は多数あるが、邦訳は『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』(岩波文庫、杉之原寿一訳)のみである。


目 次


巻頭言

はじめに

第Ⅰ部 生 涯

1.共産主義者たらんとの決意と、フリードリッヒ・エンゲルスとの出会いまで(1819-1843 年)

青年期
『ライン新聞』

2.疾風怒濤-ロンドン移住まで(1843-1850 年)

エンゲルスとの出会い
プルードン批判
亡命職人たち
『共産党宣言』とパリ追放

3.『経済学批判』、『資本論』第1 巻の完成まで(1850-1867 年)

『フランスにおける階級闘争』と『ブリュメール18 日』
「ニューヨーク・トリビューン」の通信員
『経済学批判』と『資本論』
国際労働者協会(インターナショナル)

4.その死まで(1867-1883 年)

パリ・コンミューンとインターナショナルの終焉
マルクスの死
第Ⅱ部 学 説

Ⅰ.経済学批判、価値理論

価値
剰余価値
生産性の発展
本源的蓄積

Ⅱ.平均利潤の謎

価値理論と経験的事実の対立
利潤率の低下

Ⅲ.資本主義的生産様式とその発展

Ⅳ.唯物史観

ヘーゲルを清算するものとしての唯物史観
弁証法

Ⅴ.批判

短い(9 つの)批判
マルクスの偉大さ
  • 訳者あとがき(解題)
  • テンニースにとってのマルクス
  • 翻訳について
  • 人名索引
  • 事項索引
  • 原著索引にはない事項にかかる索引

訳者あとがき(解題)


本書は、フェルディナント・テンニース(Ferdinand Tönnies,1855 年7 月26 日 – 1936 年4 月9 日)の、 Marx. Leben und Lehre(Lichtenstein, Jena, 1921)の全訳である。Tönnies の日本語表記には様々のものがあるが、引用文のなかでの表記を除き、テンニースとしておく。

テンニースが死んで、もう80 年が過ぎた。いまやテンニースは『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』の著者として以外は、忘れられた人間といっていい。また、テンニースの仕事は、『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』を除き、日本では本書( “Marx. Leben und Lehr” )を含めてほとんど知られていない。テンニースの研究者ではない私も、当然のことながら、テンニースにこういう作品があることを、少し前まで知らなかった。

それなのにどうして今更本書を翻訳するのかと言えば、2018年がマルクス生誕200 年にあたり、マクルスが、「左翼」の非マルクス主義者たちにどう受け止められてきたのか、その限界や誤解をどう指摘されてきたのかを見るいい機会だと思ったからにほかならない。

2017 年の秋から2018 年の3 月まで、16 回にわたって「ちきゅう座」(Web Site)にこの翻訳の前半部分(第一部)を連載した。当初の予定では、第二部を含め、全文を翻訳し、それを分割して掲載するつもりでいた。しかし、この連載を見た関係者より、第一部の連載を終えた時点で、連載を中断し、未掲載のままとなってしまう第二部(12 回の連載を予定していた)と併せて一冊の本としたらどうかという提案があった。

それは、2018 年が「マルクス生誕200 年」にあたるということが大きな理由であった。2018 年のことは、訳文の「ちきゅう座」掲載時の途中から気づいていた。それで、訳文を分割掲載するよりは、できるだけ読みやすい形で読者に提供したほうがいいのではないかと思い、上記の提案に従うこととした。この翻訳の一部(前半)は「ちきゅう座」での連載を若干の修正のうえ、統合したものである。

訳者紹介

片桐幸雄(かたぎり・さちお) 1948 年 新潟県に生まれる  1973 年 横浜国立大学卒業、日本道路公団入社 同公団総務部次長、内閣府参事官(道路関係四公団民営化推進委員会事務局次長)等を歴任し、2008 年定年退職

・主たる論文と著書
〈論文〉「1931 年のクレジット・アンシュタルト(オーストリア)の危機と東欧農業恐慌の関連性について」(『研究年報 経済学』(東北大学経済学会、第52 巻第2 号、1990 年) 「国際通貨の何が問題か」(『経済理論学会年報第35 集』経済理論学会編、青木書店、1998 年)
〈著書〉『国際通貨問題の課題』批評社、1996 年 『スラッファの謎を楽しむ─「商品による商品の生産」を読むために』社会評論社、2007 年 『なぜ税金で銀行を救うのか─庶民のための金融・財政入門』社会評論社、2012 年 『左遷を楽しむ─日本道路公団四国支社の一年』社会評論社、2015 年

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