| 詳報 | 纐纈厚/著 [増補版]総力戦体制研究 日本陸軍の国家総動員構想

四六判並製・301頁 定価=本体2700円+税
ISBN978-4-7845-1567-7 2018年12月刊


目 次


◆ 『総力戦体制研究』の復刊に寄せて

◆ 三一書房版まえがき


第一章 第一次世界大戦と総力戦
 総力戦概念の登場
 総力戦の内容と特質
 総力戦としての第一次世界大戦
 総力戦概念の受容
 政党・財界人の総力戦準備構想
 陸軍の総力戦研究機関
第二章 日本陸軍の総力戦準備構想 
 『全国動員計画必要ノ議』
 『帝国国防資源』
 『欧州交戦諸国ノ陸軍ニ就テ』
 『国家総動員に関する意見』
第三章 国家総動員の法整備とその実施機関
 軍需工業動員法の制定
 軍需局から陸軍省工政課設置まで
 陸軍軍需工業動員計画の開始
 国勢院と作戦資材整備会議の設置
 国勢院廃止と軍の対応
 国家総動員機関の設置準備
 国家総動員思想の定着
 暫定動員期間計画の設定
 陸軍軍需動員計画の進展
 企画院業務と国家総動員法の制定
第四章 軍部批判の展開と陸軍改造計画
 大戦後の陸軍軍備拡充計画
 軍部批判の展開
 議会での軍縮論議
 軍縮要求世論の形成
 陸軍の危機意識
 陸軍の軍備状況
 陸軍改造計画案
 陸軍改造計画の実行
 宇垣軍縮の断行
 軍装備近代化の実態
第五章 総動員政策をめぐる対立と矛盾 
 宇垣軍縮の評価
 軍近代化をめぐる対立
 軍近代化の阻害要因
 四個師団削減の理由
 総動員政策の開始
 陸軍軍政改革の意図
 節減経費の転用問題
 時局兵備改善計画
第六章 国民統合・教化策の展開  
 国民思想への着目
 対国民観の変化
 在郷軍人会の役割
 規約改正の意味
 青年団の再編統合
 青年訓練所の開設
 学校教練の実施
 現役将校の配置
 良兵良民から良民良兵へ
第七章 戦争指導の実態と軍の論理 
 総力戦と戦争指導
 統帥権独立制の形成
 防務会議と臨時外交調査委員会
 大本営と大本営政府連絡会議
 戦争指導の主導権抗争
 軍部の政治的地位強化
 「皇国総力戦争指導機構ニ関スル研究」
 戦争指導機構改革案
第八章 国防思想の宣伝普及と治安対策
 「思想戦」への対応
 国防思想の宣伝普及と戦争危機の設定
 国民精神総動員運動の展開
 憲兵隊の強化
 陸軍の治安出動準備
 国民監視体制の設定
 警備演習への強制動員
 軍部の限界性
◆ 附録資料
 『全国動員計画必要ノ議』
 『帝国国防資源』
 『国家総動員に関する意見』
補章1 〈軍の論理〉に包摂された〈民の論理〉 ──日本型総力戦体制構築の実際と限界──
 はじめに──総力戦の衝撃と日本の対応
 総力戦としての第一次世界大戦
 総力戦論の特徴
 総力戦の衝撃と日本の総力戦準備
 日本の総力戦準備
 国家総動員法制定まで
補章2 変質するデモクラシー ──戦前期日本型デモクラシーを読み解く──
 はじめに
 大正デモクラシー時代の総力戦準備
 総力戦体制とデモクラシー
 迫られるファシズム論の見直し
 総力戦社会に包摂される危うさ
補章3 蘇生する総力戦思想と形骸化する民主主義思想 ──民主主義をめぐる政治環境──
 はじめに
 深まる支配の危機意識
 総合安保論の構造的特質
 危機管理という名の動員システム

◆ 増補版あとがき


著者紹介 纐纈 厚(こうけつ・あつし)1951年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、明治大学特任教授(研究・知財戦略機構)、山口大学名誉教授・元同大学理事兼副学長。東亜歴史文化学会会長・植民地文化学会副代表。明治大学国際武器移転史研究所客員研究員。政治学博士。日本近現代政治軍事史・現代日本政治論専攻。主な著書に、『近代日本政軍関係の研究』(岩波書店)、『文民統制』(同)、『暴走する自衛隊』(筑摩書房・新書)、『侵略戦争』(同)、『日本降伏』(日本評論社)、『逆走する安倍政治』(同)、『日本はなぜ戦争をやめられなかったのか』(社会評論社)、『周辺事態法』(同)、『侵略戦争と総力戦』(同)、『権力者たちの罠』(同)、『監視社会の未来』(小学館)、『日本海軍の終戦工作』(中央公論社・新書)など多数。

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増補版あとがき

私が『総力戦体制研究』(一九八一年初版)を出版してから、すでに四〇年近い年月が経過した。駆け出しの研究者であった私が、不充分な研究蓄積のなかで、ともかく一気に書き上げた思いのなかにあったものは、いったい何であったのか。いまでもこの本を開くたびに、常に繰り返し自問を続けている。それは恐らく、この日本社会が戦前における〈軍の論理〉から解放されず、表向きの民主化のなかで、再びその論理に掠め取られていくことを予見しつつ、そのことに警鐘を鳴らしたい、との直観のようなものがあったからだった。残念ながら、その予感は当たってしまったようだ。

戦前の歴史を教訓とし、〈軍の論理〉から解放され、これに対置する〈民の論理〉を紡ぎ出していく思想的営みと実践的な動きが、私たちに少なかった、と総括するには躊躇する。相応の営みと動きが、深く刻まれてきた戦後史を私たちは歩いてきたはずだから。それでも依然としてそれは十分ではなかった、とは断言できるだろう。

そうした思いを抱いていたところに、今回『総力戦体制研究』が再復刻されることになった。筆者としては望外の喜びには違いないが、そうした課題に向き合わざるを得ない状況にも暗澹とするばかりである。それで再復刻にあたり、改めて三本の小論を増補することにした。

補章1は文字通り、〈軍の論理〉と〈民の論理〉の対置関係を踏まえて、本書で強調したかったことを、改めて整理してみた。そして、私が本書を通して繰り返し説いてきたデモクラシーへの疑問を補章2で展開している。

戦後デモクラシー(民主主義)が、本来獲得すべきデモクラシーであったのか、との問いは多くの論者が説いている通りである。私は戦前の軍国主義や天皇制が国民を強制的に動員するシステムとして機能し、戦後はこのデモクラシーが国民の同意を調達しながらも、事実上は国家主義へと誘う、もう一つの動員思想として機能してきたのではなかったか、と考えている。そして、現在では多様な形態を伴いながら、総力戦思想が蘇生しているのではないか、と思わざるを得ない。そのことを補章3で触れている。

ここで強調しているのは、結局のところ総力戦思想は、現実のデモクラシーそのものではないか、ということである。つまり、私たちは依然としていわゆる「本物のデモクラシー」を手に入れていない、ということである。その間に安倍政権に象徴されるような、事実上の〈軍の論理〉が大手を振って罷り通り、本物のデモクラシーを獲得しようとする人々を分断し、制圧しているありさまである。

そうした現状を重ね合わせる時、私たちは現在、戦後版の総力戦思想としての戦後デモクラシーの中に放り込まれているかのようだ。こうした状況から脱するためにも、総力戦体制研究が今後一層深化することを期待したい。

二〇一八年十一月 纐纈 厚


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