| 詳報 | 佐々木 隆治/著【増補改訂版】マルクスの物象化論 ─資本主義批判としての素材の思想─

A5判上製・455頁 定価=本体4,500円+税
ISBN978-4-7845-1860-9
2019年1月刊


目 次


序 論

第Ⅰ部 「実践的・批判的」構えとしての「新しい唯物論」


第1章 マルクスの「唯物論」にかんする諸説

第1節 「マルクス・エンゲルス問題」を考慮しないアプローチ
第2節 「外挿法」的なアプローチ
第3節 「実践的唯物論」によるアプローチ
第4節 「マルクスの唯物論そのもの」を考察対象とするアプローチ
第5節 小 括

第2章 マルクスにおける「新しい唯物論」

第1節 『資本論』における「唯物論的方法」
第2節 初期の諸著作における唯物論
第3節 『経済学哲学手稿』の唯物論
第4節 テーゼ(1)と『経済学哲学手稿』の差異
第5節 「フォイエルバッハ・テーゼ」におけるフォイエルバッハ批判の意味
第6節 テーゼ(4)における「唯物論的方法」
第7節 小 括
補 注 『ドイツ・イデオロギー』における唯物論の用語法

第3章 哲学批判と「実践的・批判的」構えとしての「新しい唯物論」

第1節 「哲学的良心の清算」と「新しい唯物論」の確立
第2節 『経哲手稿』と「テーゼ」・『ドイツ・イデオロギー』に おける哲学批判の差異
第3節 「実践的・批判的」構えとしての「新しい唯物論」
第4節 哲学批判の深化とプルードン批判
1.『経哲手稿』および『聖家族』におけるプルードン評価
2.「アンネンコフへの手紙」および『哲学の貧困』におけるプルードン評価
3.哲学批判から経済学批判へ
第5節 小 括

第Ⅱ部 物象化論の「実践的・批判的」意義

第4章 物象化論の理論構成

第1節 物象化論をめぐる諸説
第2節 物象化とはなにか
第3節 物象化論の核心と無意識の形態的論理としての「商品語」
1.「相対的価値形態の内実」について
(1)「価値物Werthding」について
(2)「回り道」について
(3)「内実論」第6段落以降
2.「商品語」とはなにか
3.「商品語」の論理とその現れ
第4節 認識論的転倒としての物神崇拝
1.「物神性」節における物象化と物神崇拝
2.「等価形態」における物神崇拝
3.近代主義としての「実体」批判
第5節 物象化のもとでの実践的態度の形成
1.物象の人格化
2.物象化による素材に対する態度の変容
(1)貨幣の成立
(2)貨幣蓄蔵
第6節 小 括

補論1 物象化論と『資本論』第1 部第1 篇の理論構造

1.『資本論』第1部第1篇の基本構造
2.物象化(商品章)
3.物象の人格化(交換過程章)
4.制度および法律(貨幣章)
5.三つの次元の関連とその意義

第5章 物象化と疎外

第1節 「疎外論」の陥穽
第2節 『経哲手稿』と『要綱』における外化と疎外
第3節 マルクス疎外論の核心
第4節 小 括

第6章 物象化と所有

第1節 既存の所有論解釈の諸困難
第2節 近代的私的所有の特異性
1.物象化と近代的私的所有
2.共同体的所有と近代的私的所有
第3節 取得法則転回と本源的蓄積の差異と意義
1.近代的私的所有にたいする批判としての取得法則転回
2.マルクスにおける共同性と「個人的自由」
3.「個人的所有」の再建の意義
第4節 小 括

第7章 価値の主体化としての資本と素材的世界

第1節 価値概念と素材的次元
1.叙述の方法と論理的展開の意義
2.価値の発生と歴史的次元
3.価値と価値実体
4.価値量について
5.価値概念の「実践的・批判的」意義
第2節 価値の主体化としての資本
1.価値の自立化の深化
2.資本の存立と物象の人格化および人格の物象化
(1)資本家
(2)賃労働者
(3)生産過程における資本家と賃労働者
第3節 資本による素材的世界の編成 ──直接的生産過程を題材として
1.資本のもとへの労働の形態的包摂と素材的編成
2.資本のもとへの労働の実質的包摂と素材的論理の変容
(1) 形態的包摂にともなう変化
(2) 素材的次元での従属的態度の形成
(3) 社会的労働の資本の生産力としての現象
第4節 小 括

補論2 マルクスの賃労働論

1.労働とはなにか
2.労働の自由と社会的形態
3.賃労働と物象化
4.賃労働による資本の産出
5.物象による自発的従属の強制
6.物象にもとづく特異な承認関係
7.マルクスにおける労働の自由
8.労働の自由をこえて

補論3 マルクスにおける労働を基礎とする社会把握

1.マルクスの「新しい唯物論」
2.労働形態と経済的形態規定
3.素材代謝と労働

結 論 素材の思想家としてのマルクス

あとがき
増補改訂版あとがき


[著者紹介]佐々木隆治(ささき・りゅうじ)1974年生まれ。立教大学経済学部准教授。一橋大学社会学研究科博士課程修了、博士(社会学)。著書:『マルクス 資本論』角川選書、2018年 『カール・マルクス』ちくま新書、2016年『私たちはなぜ働くのか』旬報社、2012年 『マルクスとエコロジー』共編著、堀之内出版、2016年

増補改訂版あとがきより

初版からこの「増補改訂版」のあいだの筆者の理論的変化で一番大きいものは、物象化論の枠組みの修正である。本書では、物象化論を①物象化 ②物神崇拝 ③物象の人格化という三つの次元によって整理したが、2015年に執筆した「物象化論と『資本論』第一部第一篇の理論構造」(『季報唯物論研究』132号所収)では新たに「制度および法律」という次元を設定し、(1)物象化(2)物象の人格化(3)制度および法律という三つの次元によって整理した。この増補改訂版に収めた「補論1 物象化論と『資本論』第1部第1篇の理論構造」はこの拙稿に若干の修正を加えたものである。本書の初版では、②に位置づけられていた物神崇拝は(1)から発生する認識論的転倒であるが、同様に(2)や(3)の次元からも「ホモ・エコノミクス」幻想、制度幻想および法学幻想という認識論的転倒が発生する。そのため、2015年執筆の拙稿では認識論的転倒については独自の次元として設定するのではなく、それぞれの次元においてそれに対応する認識論的転倒が発生するというように再整理した。このような物象化論の新たな理論枠組みは、初版の枠組みと対立するわけではないが、近代の転倒構造を解明する物象化論の理論的意義をより鮮明にするものだと考えている。新たな理論枠組みの三つの次元のうち、(3)の制度および法律の次元については本書の本論でも、2016年刊行の拙著『カール・マルクス』(ちくま新書)でもほとんど扱わなかったが、2018年刊行の拙著『マルクス 資本論』(角川選書)では比較的詳しく扱ったので参照していただきたい。

もう一点重要なのは、労働と素材代謝の関連をより明確に位置づけたことである。初版においても、本書の副題からわかるように、素材および素材代謝の意義は強調されており、それらと労働との関連にかんしても、抽象的人間的労働および有用労働という労働の二面的性格と素材的世界との関係については比較的詳細に考察されていた。しかし、初版においては、「人間と自然とのあいだの物質代謝を媒介する行為」という、労働そのものの理論的規定が扱われておらず、その結果、労働そのものと物質代謝との関連の把握が不十分なものにとどまり、賃労働という労働形態と物質代謝との関連をやや不鮮明にしていた。この欠点について筆者は初版刊行後の比較的早い時期に気づき、翌年の2012年に刊行された拙著『私たちはなぜ働くのか―マルクスと考える労働と資本の経済学』(旬報社)においては「人間と自然とのあいだの物質代謝を媒介する行為」という労働の概念規定から出発し、議論を展開することにより、形態規定と物資代謝との関連をより明確に叙述した。この増補改訂版には、『私たちはなぜ働くのか』のダイジェスト版とも言える拙稿「マルクス「潜勢的貧民」としての「自由な労働者」」(市野川容孝・渋谷望編『労働と思想』所収)に若干の修正を加えたものを「補論2 マルクスの賃労働論」として収録している。

また、このように労働の概念規定が明確になることにより、初期から晩期にかけてのマルクスの理論的発展をより正確に位置づけることが可能になった。その成果を論文化したものが2017年に公刊された拙稿『資本論』と「労働を基礎とする社会把握」」(『季刊経済理論』53巻4号所収)である。この拙稿から
「補論1」と「補論2」と重複する箇所を削除し、若干の修正を加えたのが「補論3 マルクスにおける労働を基礎とする社会把握」である。読者は、「補論3」と本書第Ⅰ部を比較することにより、第Ⅰ部における初期マルクスの理論的発展の叙述が、労働の理論的位置づけが不明確であるため、不十分なものになっていることに気づかれるだろう。また、同様に、第Ⅱ部第7章及び結論において提示された「素材の思想」というテーゼも、人間と自然とのあいだの素材代謝の媒介という労働の概念規定によって、より明瞭に理解できることに気づかれるだろう。


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