| 詳報 | 大村泉/編著 唯物史観と新MEGA版『ドイツ・イデオロギー』

唯物史観の成立解明に新段階を画する『ドイツ・イデオロギー』研究の集大成。待望の新MEGA I/5刊行にあわせ、ドイツ、中国、日本の研究者がマルクスの唯物史観の原像に迫る。

 A5判並製 定価=本体2800円+税 304頁
ISBN978-4-7845-1857-9 2018年10月下旬刊


大村泉/編著


執筆者/

大村泉
東北大学名誉教授、国際マルクス/エンゲルス財団(IMES)編集委員

A.デミロヴィッチ
ゲーテ大学特任教授 D.シュヴァルツ:雑誌〝Z.〟協力者

D.フィライシス
在野マルクス研究者 F.O.ヴォルフ:ベルリン自由大学栄誉教授

渋谷正
児島大学名誉教授 渡辺憲正:関東学院大学経済学部教授

盛福剛
中国・武漢大学哲学院講師 窪俊一:東北大学大学院情報科学研究科准教授

窪俊一
東北大学大学院情報科学研究科准教授


『マルクス/エンゲルス全集』(MEGA)の本格的編纂(新MEGA)は1967年に、ソ連と東ドイツの両共産党の共同事業として開始された。1989年のベルリンの壁崩壊に続くソ連、東独の消滅後、その事業は1990年10月、国際マルクス/エンゲルス財団(本部アムステルダム)が結成され引き継がれた。

2017年11月27日、『ドイツ・イデオロギー』を収録する新MEGA I/5がリリースされた。本書は、この新資料をテキストとするドイツと中国の研究者による『ドイツ・イデオロギー』をめぐる諸問題の論究を収録し、日本における今日までの論争的課題を詳細に再検証する。

本書はマルクス生誕200年記念として刊行された。その理論的作業は、マルクスによる唯物史観の原像を照射する、新たな地平を切り拓くであろう。


目 次


凡 例
はじめに

第Ⅰ部 新MEGAⅠ/5 と刊行後のドイツにおける反響


第1章 新MEGA版『ドイツ・イデオロギー』の刊行を報じるIMES事務局長のプレスリリース

はじめに
Ⅰ.新MEGA I/5 の内容
Ⅱ.新MEGA I/5 の意義
Ⅲ.明らかになった新事実と研究史への問題提起
Ⅳ.この問題提起をうけて

第2章  『 ドイツ・イデオロギー』がそもそも存在しなかった

Ⅰ. マルクスとエンゲルスは,共同の哲学を仕上げるため1845年夏ブリュッセルにいたのではなかった
Ⅱ. あたかも共同の出版プロジェクトがあるかのように
Ⅲ. それはまだ名前も決まっていない論文集への寄稿であった
Ⅳ. スターリンの目標は批判的マルクス主義知識人の隠れ家を抹殺することだった
Ⅴ.マルクスの理論は闘いのなかで生まれた
Ⅵ. マルクスの理論が包括しているものは経済学批判に止まらない
Ⅶ.この粗野な経験主義は宣戦布告と理解できる
Ⅷ. マルクス/エンゲルスは哲学のテキストを「印刷された記録文書」として扱う
Ⅸ.今日でも見られる一つの知的活動
Ⅹ. 人間は人間自身及びその生活環境から自分自身を作り上げるという観念に満足してはならない
Ⅺ. 支配階級は哲学を媒介にして彼らの特殊利害を共同の利害として表現する

第3章  「 フォイエルバッハ」章におけるテキストの配列変更 新版『ドイツ・イデオロギー』(新MEGA I/5)の刊行によせて

Ⅰ.主要草稿と2つの断片
Ⅱ.MEW, Bd.3 との違い
Ⅲ.テキストの分離と編入
Ⅳ.新版における再現
Ⅴ.編集史Ⅰ:1926-1960 年
Ⅵ.編集史Ⅱ:1960-1972 年
Ⅶ.編集史Ⅲ:1972 年から現在まで
Ⅷ.新MEGA 先行版における新しい配列
Ⅸ.新MEGA I/5 における理由付け


第4章 大転換期のマルクス/エンゲルス研究 『ドイツ・イデオロギー』テキストの批判的新版に寄せて

Ⅰ.この批判的新版の位置および成果
Ⅱ. 書かれなかった「フォイエルバッハ」章の文献学的および理論的意義
Ⅲ. シュティルナー批判:ライプチヒ宗教会議。第3章「聖マックス」
Ⅳ.結論

 

第Ⅱ部 オーサーシップ,草稿編訳をめぐる論争


第5章 唯物史観の第1発見者

序 論  研究史の到達点と未解決問
Ⅰ.口述筆記の可能性と検証方法
Ⅱ.基底稿作成過程で生まれる即時異文の多寡
Ⅲ.単独稿とH5c の基底稿に刻印された著者の書き癖
1.エンゲルスの書き癖
2.マルクスの書き癖
3.H5c に確認できる著者の書き癖
Ⅳ.即時異文の量的対比
Ⅴ.H5c の即時異文の特徴
1.同音異義語の書き損じ
2.多数の定冠詞,不定冠詞の置換及び削除
3.直ちに復活する削除訂正
Ⅵ.検証結果
Ⅶ. オンライン版を用いた読者自身による本章の検証を期待する
補 説

第6章 唯物史観の成立に関する廣松渉のエンゲルス主導説批判

はじめに
Ⅰ.『 ドイツ・イデオロギー』以前のマルクスとエンゲルスの思想形成
1.マルクスの思想形成
2.エンゲルスの思想形成
3.『ドイツ・イデオロギー』と抜粋ノート
  ⑴「マンチェスター・ノート
  ⑵「ギューリヒ抜粋」
Ⅱ.廣松渉のエンゲルス主導説批判
1.エンゲルス主導説批判
2.マルクスとエンゲルスの共同執筆
3.「フォイエルバッハに関するテーゼ」
4.「口述筆記説
結 び

第7章 マルクス社会理論の生成 『経済学・哲学手稿』と『ドイツ・イデオロギー』の接合

はじめに
Ⅰ. 1843 年における〈土台= 上部構造〉論の生成と理論転換
1.ヘーゲル法哲学批判の2段階
2.宗教批判
3.〈土台= 上部構造〉論の生成
4.1843 年の理論転換と市民社会概念の歴史的相対化
Ⅱ.『経済学・哲学手稿』の疎外論と共産主義
1.『経済学・哲学手稿』疎外論の性格と〈労働= 所有形態〉
2.「歴史の変革」の論理と共産主義の措
Ⅲ.歴史観の研究(1845-46)
1.18 世紀歴史記述の批判的受容
2.マルクス《リスト評注》(1845 年8月
3.シュルツ『生産の運動』
Ⅳ.唯物史観の形成
1.〈土台= 上部構造〉論の歴史的拡張
2.生産様式と「歴史の変革」の論理
3.唯物史観の構想
4.唯物史観の独自性
[付論]望月清司『マルクス歴史理論の研究』によせて

第8章 イデオロギー批判は,いつ,いかにして,成立したのか 新MEGA I/5 解題に対する異論

はじめに
Ⅰ.1844 年までのフォイエルバッハ論
1.1844 年までのフォイエルバッハ哲学受容
2.フォイエルバッハ批判の本格化
3.シュティルナー『唯一者とその所有』
Ⅱ.ヘーゲル左派内部論争
1.フォイエルバッハのシュティルナー反駁
2.バウアー《L・フォイエルバッハの特性描写》
3.ヘス『最後の哲学者たち』
4.ヘーゲル左派論争の小括
Ⅲ.ドイツ・イデオロギー批判の条件
1.〈土台= 上部構造〉論と啓蒙主義的理論構成に対する批判
2.現実[市民社会]の批判的分析
3.現実[市民社会]の変革理論と歴史理論の形成
Ⅳ.草稿『ドイツ・イデオロギー』のイデオロギー批判
1.ドイツの宗教批判に対する批判
2.現実[市民社会]の批判的分析
3.現実[市民社会]の変革に関わる批判
4.歴史理論の形成

第9章  中国における『ドイツ・イデオロギー』編訳史概観 中国語訳廣松版(2005年)と大村/渋谷/平子による批判以後を中心に

はじめに
Ⅰ.郭沫若によるリャザーノフ版の翻訳
Ⅱ. 中央編訳局によるアドラツキー版とバガトゥーリヤ版の編訳
1.アドラツキー版の編訳
2.バガトゥーリヤ版の編訳
Ⅲ.中国語訳廣松版の出版とそれ以後最新の研究動向
1.中国語訳廣松版の出版
2.廣松版をめぐる中日論争
3.中国における論争の受容
4.「『ドイツ・イデオロギー』と文献学シリーズ」の出版
Ⅳ.『 ドイツ・イデオロギー』改稿過程の表記における中国編訳史の到達点
1.中国語訳廣松版における異文表記
2.新MEGA 先行版と試作版の翻訳
Ⅴ.結 語

補 章 中国語訳廣松版刊行前後の研究史とオンライン版

Ⅰ.中国語訳廣松版刊行前後の研究史
Ⅱ.オンライン版のコンセプト

附 篇 新MEGA 全4部門114 巻と既刊一覧

Ⅰ.MEGA の歴史
Ⅱ.MEGA の文献学的原則
Ⅲ.第Ⅰ部門:著作,論文,草稿
Ⅳ.第Ⅱ部門:『資本論』と準備草稿
Ⅴ.第Ⅲ部門:往復書簡(Briefwechsel)
Ⅵ.第Ⅳ部門:抜粋,メモ,欄外書き込み(Exzerpte, Notizen)
Ⅶ.マルクス/エンゲルス年報(MARX-ENGELS-JAHRBUCH)

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著者紹介

はじめに,第1,5章,補章,あとがき,第4章(翻訳)

大村泉(1948, 和歌山)東北大学名誉教授/ IMES 編集委員,博士(経済学)
主編著:新MEGAⅡ/12(2005),Ⅱ/13(2008),Ⅳ/14(2017),『新MEGA と「ドイツ・イデオロギー」の現代的探究―廣松版からオンライン版へ』(八朔社, 2015)

第2章

Prof. Dr. Alex Demirović アレックス・デミロヴィチ(1952, Darmstadt-Eberstadt)ゲーテ大学特任教授,ローザ・ルクセンブルク財団・フェロー,
主編著:“Nicos Poulantzas(” 1987), “Demokratie und Herrschaft(” 1997), “Der nonkonformistische Intellektuelle(” 1999), “Komplexität und Emanzipation(” 2001), “Demokratie in der Wirtschaft(” 2007), “VielfachKrise im finanzmarktdominierten Kapitalismus” (2011), “Wissenschaft oder Dummheit(” 2015).

第3章

Dr. Winfried Schwarz ヴィンフリート・シュヴァルツ(1948, Aschaffenburg bei Frankfurt am Main)雑誌 „Z.“ 協力者 主編著:マルクスの経済学方法論に関する論文・著作多数(翻訳に,時永,大山訳『資本論体系成立史:「経済学批判要綱」から「資本論」まで』(法政大学出版会,1986 年)。大谷訳・ヨハン・モスト『「資本論入門」コメンタール』(岩波書店, 1987年), がある)。

第4章

Danga Vileisis ダンガ・フィライシス(1943, Kaunas, Lithuania(Litauen))
在野マルクス研究者,出版者
主論文:「ファーガソンと史的唯物論」(大村ほか, 2015, 第8章)

Prof. Dr. Frieder Otto Wolf フリーダー・オットー・ヴォルフ(1943, Kiel)
ベルリン自由大学栄誉教授,元欧州議会議員主編著:マルクス/エンゲルスに関する新領域,政治哲学,急進派哲学,実践的人道主義に関する著作,論文多数(www.friederottowolf.de, 参照)

第6章

渋谷正(1949, 山形)鹿児島大学名誉教授,博士(経済学)主編著・訳書:『草稿完全復元版 ドイツ・イデオロギー』新日本出版社1998 年(編訳);「『ドイツ・イデオロギー』はいかに編集されるべきか―岩波文庫版『ドイツ・イデオロギー』をめぐって―(上)・(中)・(下)」,『経済』新日本出版社, 2004 年1月・2月・4月

第7,8章

渡辺憲正(1948, 静岡)関東学院大学経済学部教授,修士(哲学)
主著:『近代批判とマルクス』(青木書店, 1989 年);『イデオロギー論の再構築』(同,2001 年);「『経済学批判要綱』の共同体/共同社会論」(『関東学院大学経済学会研究論集 経済系』第223 号, 2005),ほか。

第9章

盛福剛(1987, 中国・青島)武漢大学哲学学院専任講師,武漢大学マルクス主義哲学研究所(兼務),博士(経済学)主著:「中国におけるマルクス主義文献の初期受容に関する研究―日本からの伝播・翻訳を中心として―」(博士学位論文, 2016 年);「李達留学経歴考」『マルクス主義哲学研究』2017 年第2号,ほか。

附篇編訳,第2,3,4章翻訳

窪俊一(1955, 愛媛)東北大学大学院情報科学研究科准教授 修士(文学)
主編著:窪ほか共編著『ポートレートで読むマルクス』極東書店,2005 年;Hrsg. v. S. Kubo et al: Gruess Gott! Da bin ich wieder!, Eulenspiegel Verlag 2008/2018(第2版);窪ほか共編著『Karl Marx is my father /わが父カール・マルクス』(極東書店)2011 年 ※日・英・独3カ国語版,ほか。

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