| 詳報 | 梶谷 剛・浅井 篤/編著『実践する科学の倫理 ─医の倫理、理工・AIの倫理─』


梶谷 剛・浅井 篤/編著
『実践する科学の倫理 ─医の倫理、理工・AIの倫理─』

A5判並製・167頁 定価=本体1800円+税 ISBN978-4-7845-1103-7
2018年9月刊


まえがき


編集委員 梶谷 剛・浅井 篤

本書は2006 年から開始した東北大学大学院工学研究科の授業「生命倫理」の際に様々な分野の碩学あるいは社会貢献者の皆様が大学院生に向けて講演したものが元になっています。

工学研究科に「倫理」を標榜する授業を始めたきっかけは、発展する電子工学や情報工学が私たちの幸せに結び付いている実感が無いまま開発者である私たちの手を離れて社会に良い結果と悪い結果を招来しているのではないかとの懸念を持ったからです。

悪い結果を与えているとするとその責任は開発者も部分的にせよ引き受ける必要があります。「生命倫理」授業はその責任の在り方を思索するきっかけを作ろうとの思いから始めました。

「生命倫理」は文科省の大学院教育の高度化を目指した補助金「魅力有る大学院教育イニシアチブ」を得て開始したものでしたが2007 年度から多くの講師をお招きして自由に「生命倫理」に纏わる問題や自由な意見を講演して戴き、学生との白熱した討論を行うスタイルにして以来毎年200 名以上の受講生を数えるようになり、2017 年度もその規模は変わらない人気授業になっています。

受講生も工学研究科から医学系研究科にも広がり、講師の一部にも医学系の教員をお迎えしています。

この授業では講師の皆さんの自由な発想を大切にしており、幅広いお考えを展開して戴き、学生諸君に深い理性と知性を育んで戴いています。

学生諸君には毎回講師の御意見に対する「反論」や「質問」などを含む簡単なレポートを書いて貰っています。

本書はその自由な講義の一端を読者にお伝えし、「生命倫理」についての思索を深める契機にして戴くことを目指しています。本書を「実践する科学の倫理」とした理由は「生命倫理」の受講生が工学研究科から医学系研究科まで広がったことと関係しており、広く「実践者」になるべく勉強している大学院生諸君に参考にして貰いたいとの思いからです。

本書は大学院の授業を越えて一般の方々にも「実践する科学」に纏わる問題提起を行うことも目的にしており、各章に「練習問題」のような節を設けており、読者の皆様の御思索の取り纏めにお使い戴けると思います。

本書は思いがけない程の広く刺激的な内容になっています。私たちの「実践する科学」の質は如何に私たちが深い知性を磨くかによって変わってくるはずです。本書が皆様のお役に立つことを祈っています。

本書の内容に「反論」や「発展」をお考えの方はいつでも私共にお伝え下さい。


目 次


まえがき 梶谷 剛・浅井 篤  ※上記掲載

1  医療に関わる倫理的課題について

浅井 篤

1 背景:簡単な歴史と現代医療の様相
2 医療現場の具体的問題および事例
3 臨床倫理の総論事項と問題へのアプローチ法
4 結論

練習問題:事例に対する対応案
1 ◉表3 の事例では、どのような治療方針が取られるべきだろうか
2 ◉表4 ~ 7 の事例に関わる判断・選択
3 ◉表8 の事例に関連して、我が国では保険診療と保険外診療の併用(二層医療)を認めるべきだろうか

2  出生前診断にまつわる倫理的問題

圓増 文

1 はじめに
2 出生前診断が提起する倫理的問題
3 選択的中絶をめぐる倫理的問題の論点
 3-1 ◉ 女性(あるいはカップル)の自己決定
 3-2 ◉ 優生思想
 3-3 ◉ 障害をもって生きる人への影響
4 社会によって異なる技術提供の仕方
5 今後の課題
練習問題と解答例

3  公衆衛生の倫理

大北全俊

1 身近で遠い「公衆衛生の倫理」
2 公衆衛生について
3 公衆衛生が抱える主な倫理的課題
4 公衆衛生の倫理の道具箱:倫理的な議論のための枠組み
 4-1 ◉危害原理
 4-2 ◉功利主義
 4-3 ◉社会正義
 4-4 ◉より公衆衛生倫理に合わせた議論の枠組み
5 公衆衛生の練習問題:健康管理は義務なのか?
6 健康とは何か

4  老人の尊厳と死について

庄子清典

1 工学系学生と老人の出会い
2 介護施設が抱える3つの課題
3 安全度と自由度
4 自由度と身体の健康管理
5 安全度と身体拘束
6 道具の進歩と社会的価値観の変
7 延命の問題とその判
8 尊厳と習慣
9 尊厳ケア(尊厳と習慣を守るケア)の事例~自分の心に封印をかけたA さん(女性)
練習問題

 

5  科学法則の因果律と人間性

 沢田康次

「あなたは人間ですか? それともAI ですか?」
1 序論
2 科学と工学の歴史
3 科学法則が与える因果律・決定論の限界
 3-1 ◉近代科学の決定論と還元主義の誤り
 3-2 ◉科学社会における現実問題
4 人間と科学の関係
5 わが国の科学の歴史的・地理的理由による特殊性
6 人間性とは何か?
7 科学の客観性と文化の客観性
8 第二のルネッサンス
9 結言
練習問題

 

6  研究倫理

 梶谷 剛

1 海賊のはなしから
2 研究者の行為に関する倫理
3 2014 年ガイドライン
4 研究の目的や手段に関する倫理
5 研究者の属する機関や関係学会の倫理
練習問題

 

7  人生の選択

野池達也

1 人生の選択
1-1 ◉学生時代の体験
1-2 ◉人生の選択に向き合うに至った動機
2 ライフワークの選択と恩師との出会い
2-1 ◉所属学科の選択に際して
2-2 ◉ライフワークの選択
2-3 ◉人々のために
2-4 ◉恩師との出会い
3 いのちの尊厳について
3-1 ◉いのちの尊厳を考える会(略称いのちの会)
3-2 ◉「いのちの像」と日野原重明先生
4 人を生かすものは愛である
5 東日本大震災・原発事故とメタン発酵実験
5-1 ◉霊山(りょうぜん)プロジェクト・バイオマスのメタン発酵実験
5-2 ◉あんぽ柿のメタン発酵
5-3 ◉資源作物デントコーンのメタン発酵
5-4 ◉メタン発酵寺子屋教室の開設
6 福島第一原子力発電所事故現場を見学して
7 おわりに
練習問

 


著者略歴

浅井 篤(あさい あつし)

1988 藤田保健衛生大学医学部医学科卒業
1988 国立東京第二病院研修医
1990 国立東京第二病院総合診療部レジデント
1993 カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部医療倫理プログラム研究員
1995 京都大学医学部附属病院総合診療部助手
1998 モナッシュ大学生命倫理学センター客員研究員
2000 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療倫理学分野助教授
2005 熊本大学大学院医学薬学研究部生命倫理学分野教授
2014 東北大学大学院医学系研究科医療倫理学分野教授 現在に至る

学位
医学士(藤田保健衛生大学1988 年)
生命倫理学修士(Master of Bioethics)(Monash 大学 1999 年)
医学博士(京都大学1999 年)
圓増 文(えんぞう あや)

2006 慶應義塾大学大学院文学研究科哲学・倫理学専攻後期博士課程 単位修得済み満期退学
2009 日本学術振興会特別研究員(PD)
2013 東京大学大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣死生学・応用倫理講座 特任研究員(常勤)
2015 東北大学大学院医学系研究科医療倫理学分野助教

学位 博士(哲学)慶應義塾大学(2013 年)
大北全俊(おおきた たけとし)

2002 大阪大学大学院文学研究科博士課程後期臨床哲学専攻単位取得退学
2006 大阪大学大学院医学系研究科教務補佐員
2009 エイズ予防財団リサーチ・レジデント(国立病院機構大阪医療センター配属)
2010 大阪大学大学院文学研究科助教
2013 大阪大学大学院医学系研究科特任助教
2014 東北大学大学院医学系研究科助教
2017 東北大学大学院医学系研究科講師 現在に至る

学位 文学博士(大阪大学2004 年)
庄子清典(しょうじ きよのり)

1981 東北学院大学法学部法律学科卒業
1984 社会福祉法人青葉福祉会入社
1996 同上 特別養護老人ホームアルテイル青葉施設長 現在に至る
2007 社会福祉法人青葉福祉会理事長 現在に至る
2013 宮城県社会福祉法人経営者協議会会長 現在に至る
2016 仙台市老人福祉施設協議会会長 現在に至る
資格 介護支援専門員(2001 年)
沢田康次(さわだ やすじ)

1960  東京大学工学部応用物理学科卒業
1962  東京大学大学院工学研究科電子工学専攻卒業
1966  ペンシルバニア大学物理学科博士課程修了 Ph.D
1966-1968 ペンシルバニア大学Research Associate,
1968-1972 大阪大学理学部講師
1973-2001 東北大学電気通信研究所教授
1996-2001 東北大学電気通信研究所長
2001-2007 東北工業大学教授
2004-    公益財団法人国際高等研究所フェロー
2008-2013 東北工業大学学長
2014-    東北大学学際高等研究教育院シニアメンター
梶谷 剛(かじたに つよし)

1975 東北大学大学院工学研究科博士課程退学、同年 学振奨励研究員
1976 イリノイ大学博士研究員
1978 アルゴンヌ国立研究所客員研究員
1980 東北大学金属材料研究所助手
1990 同所 助教授
1993 東北大学工学部応用物理学科教授
2012 定年退職、東北大学名誉教授
2018 東北大学多元物質科学研究所産学連携研究員 現在に至る

学位 工学博士(東北大学1980 年)
野池達也(のいけ たつや)

1970 東北大学大学院工学研究科博士課程科目修了、同年 東北大学工学部助手
1975 東北大学工学部土木工学科助教授
1983 建設省土木研究所下水道部三次処理研究室長
1986 東北大学工学部土木工学科教授
2003 東北大学評議員
2005 定年退職、東北大学名誉教授
2005 日本大学大学院総合科学研究科教授
2015 同大学院退職

学位 工学博士(東北大学1975 年)

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