| 詳報 | 堀利和/著『障害者から「共民社会」のイマジン』

「市民社会」を変革する「共民社会」の構想のために

障害者から「共民社会」のイマジン

堀利和/著

定価=本体1700円+税 四六判並製224頁
ISBN978-4-7845-2411-2

著者は静岡市の小学校入学前、スティーブンジョンソン病という難病になり、その後遺症で弱視になったため、静岡盲学校に転校する。その後、東京教育大学付属盲学校に転入し、そこから明治学院大学に進学する。卒業後、保育園の産休補助の保父、養護学校のスクールバスの添乗員、点字講習会の講師として働く。そして参議院議員を12年間務める。

現在、障害のある人ない人が共に対等平等に働く事業所づくりをしているNPO法人共同連の代表。さまざまな障害者運動や地域の活動にかかわりながら、労働力の商品化・市場経済を前提とする現在の「市民社会」を、共同社会に向けて変革するための問題提起を精力的に展開している。

本書に収録したさまざまな論考は、この間の著者の発言集。「市民社会」から「共民社会」へという構想の多様な素材をそこから読み取ることができるでしょう。

2018年9月上旬刊


目 次


序 章 「共民社会」へのイマジン

第1部 障害者か健常者か、それが問題だ!

第1章 共生
1 津久井やまゆり園事件とは ─共生社会に向けた私たちの課題は何か
2 障害者理念(言葉)泥棒
3 共生の遺伝子
4 人間関係って、な~に?

第2章 共働
1 社会的事業所の見方・考え方
2 労働包摂型社会的企業、すなわち社会的事業所
3 社会的事業所論
4 日本における障害者就労の「多様」な形態と欧州・韓国の社会的企業
5 働きたい者は共同連にと~まれ!
6 仕事に障害者を合わせるのではなく、障害者に仕事を!

第3章 共学
1 総論としての合理的配慮
2 各論としての合理的配慮
3 ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)としての合理的配慮

第4章 共飲

第2部 コラム ザ・障害者

第5章 影から光が見えてくる
◦津波てんでんこ
◦世界で最も短い長編小説
◦新潟越後の評価に寄せて
◦今日の格差社会に、戦後の歌が響く

第6章 世界に類のない日本の盲人史

第7章 日常の羅針盤
◦盲人とことばたち
◦堀利和の世界
◦テーブルマナー

第8 章 世の中の現象学
◦差別社会の外に
◦公平ってな~に?
◦99%の異常
◦「個人的労働」のアウフへーベンを求めて
◦右手に虫めがね、左手に望遠鏡を!
◦日常の断絶と連続性
◦労苦と労働を越えて(未来経済学ノート)
◦共働専門家受容
◦「合成の誤謬」っておもしろい!
◦日本史のウソとホント
◦現象から原因をさぐろう!

第9章 主体探しの旅
◦我が共同連宣言
◦一年と半年をふり返って
◦堀五、六
◦我が「行動綱領」
◦「支援」から「共に」へ
◦共同連と「生活困窮者自立支援法」の関係の二側面
◦表記「障害者」の思想的意味
◦絶対否定から絶対肯定へ
◦障害者にも「働き方改革」が必要だ!
◦岡山地裁が「合理的配慮」に対する画期的な、しかし当然の判決!
◦行政は後からついてくる
◦地域とわたし
◦「偏見」と「だから」の思想
◦障害者団体も万年与党と万年野党

第10章 もう一つのアジア障害者国際交流モンゴル大会

書 評
堀利和著『アソシエーションの政治・経済学』(評者・鈴木 岳)

終 章 理論と実践からのオルタナティブな視座


著者より読者へ

本書は、最近私が書いたり講演したりしたものを読み物として一冊の本にまとめたものです。まとめるにあたって、障害者問題を基点にして社会変革への展望をイマジンしました。私の問題意識は、社会科学としての障害学、障害社会科学であり、障害者問題を狭義の意味での福祉論、社会保障論に終わらせたくないのです。その障害者問題は必然的に哲学、政治学、経済学、社会学等の分野にまで踏み込み、普遍主義としての社会変革に通底します。

私が障害者問題に初めて出会ったのは一九七三年のことです。それまでは六〇年代後半の政治社会状況の中にあって、ベトナム反戦運動、七〇年安保闘争、学園闘争、沖縄奪還闘争、三里塚闘争、石川青年奪還の狭山裁判闘争、そして赤堀冤罪事件差別裁判闘争などを闘っていました。このような「闘争」の時代でした。それはとりもなおさず、人間解放の闘いです。

七一年から七二年、七三年と、闘争は次第に挫折していきます。その後一、二年私は本を読むだけのひきこもり生活に入りましたが、大学受験を拒否された二人の重度脳性マヒ者が聴講生となって、その「聴講生」問題に関わりました。それが一九七三年です。同時に、有楽町の都庁本館第一庁舎前で座り込みテント闘争をしていた都立府中療育センター闘争にも関わることになります。私たちの七〇年代は、障害者解放運動でした。以来、今日まで、障害者問題に関わり続けています。

※序章より抜粋


著者紹介 (ほり としかず)小学校4年生の時、清水小学校から静岡盲学校小学部に転校、東京教育大学附属盲学校高等部、明治学院大学、日本社会事業学校卒。参議院議員二期(社会党、民主党)。立教大学兼任講師。現在、特定非営利活動法人共同連代表。『季刊福祉労働』編集長。著書『障害者と職業選択』共著三一書房(1979年)、『なかよくケンカしな─臨時障害者教育審議会設置法をめざして─』社会新報ブックレット(1994年)、『生きざま政治のネットワーク』編著現代書館(1995年、2016年にモンゴルで出版)、『共生社会論―障がい者が解く「共生の遺伝子」説―』現代書館(2011年)、『日本初共生・共働の社会的企業―経済の民主主義と公平な分配を求めて─』特定非営利活動法人共同連編現代書館(2012年)、『はじめての障害者問題―社会が変われば「障害」も変わる―』現代書館(2013年)、『障害者が労働力商品を止揚したいわけ―きらないわけないともにはたらく―』編著社会評論社(2015年)、『アソシエーションの政治・経済学―人間学としての障害者問題と社会システム─』社会評論社(2016年)、『私たちの津久井やまゆり園事件─障害者とともに〈共生社会〉の明日へ─』編著 社会評論社(2017年)ほか


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投稿者: 社会評論社 サイト

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