| 詳報 | 坂本進一郎/著『大地に生きる百姓 農業つぶしの国策に抗って』

取られてたまるか!
緊迫する成田の新たな土地収奪

戦乱の満洲から生還、北東開発公庫を中途退職し大潟村入植。日本を切り売りする自民党・亡国農政と格闘してきた著者による政策批判。世紀を越えて闘う三里塚農民への連帯の書。[2018年9月上旬刊]

大地に生きる百姓
─農業つぶしの国策に抗って─

坂本進一郎/著

定価=本体1800円+税 四六判並製256頁
ISBN978-4-7845-1853-1


目 次


刊行にあたって

【第Ⅰ部】 世紀を超えた成田の農民闘争

〔序〕市東孝雄さんの闘いに寄せて

〝民事強制執行〟という新手の土地収用
形になった人権思想/虫けら扱いされてたまるか/農地は公的財産/裁判の経過を振り返る/土地収用のデタラメ

農地法で農家をつぶす愚行
農地は先祖とムラからの預かりもの/農工間格差により揺れ始めた農地法/農地観に守られ存続している農地法

亡国農政と三里塚
絶えて久しい「農業の曲がり角」論/アメリカへの「おべっか外交」/トカゲのしっぽ切りの農産物自由化/「自由貿易信仰」を流布する東京のマスコミ/「人、作物、農地」の三奪作戦

「農地は我が命」の農業観

自由民権運動の伏流水 ──谷中村、秩父事件と三里塚

【第Ⅱ部】 亡国農政を批判する

〔序〕戦乱の満洲から秋田・大潟村へ

亡穀は亡国なり ──農に生きる思想と歴史観〔講演録蒐集〕
⑴ 田中正造の怒り
⑵ 農業と工業の違いは煙突があるかないかだけだ
⑶ 政治の季節から経済の季節へ
⑷ 亡国農政の歴史  傾斜生産方式──作物さらい、人さらい、ムラさらい/小農複合経営の解体(大規模化)/日本農政の縮図としての大潟村/企業大国・生活小国/三奪作戦/一九三〇年体制の解体
⑸ 抵抗権の希薄な国民   レジスタンス本場ヨーロッパのデモ風景/明治維新とは何だったのか/明治革命の芽はあった
⑹ 如何にして農業再生は可能か  農業の位置づけをはっきりさせること/自由民権(民主主義)の復権/不足払い制度(戸別所得補償制度)の復権・拡充を!

TPPに感じる「恐怖」 ──日本が日本でなくなる日
外交べたの日本/WTO体制は米国農政の〝国際版〟/行き過ぎた自由貿易信仰

正体を暴露した多国籍企業 ──TPP交渉の本質は何か
仮面をかぶる多国籍企業/多国籍企業の野望/資本の論理か生活者の論理か

モンサント社に奉仕する安倍政権 ──種子法廃止法案を見て思う
天からの授かり物/食べ物は尊厳なもの

なりゆきまかせの日本人
焼け野原の日本農業/なぜここまで来てしまったのか/なりゆきまかせ/「豊葦原瑞穂の国」を取り戻そう

人間の顔をした農業か無機質の農業か ──農民の人権は守られているか
農業の現状/憲法問題/農業複合経営と工業的農業/農業基本法と農業守護神・石黒農政/民主主義は企業の門前で立ちすくむ/ガラクタの山にされた日本の農業/国土観あるいは農地観/農業観のあいまいな日本

「食管法は本当に不要ですか?」 ──お蔵入りした原稿を読み直して
同じ穴の貉/食管法理念の解体/食管法潰しの応援団

焦眉の急の戸別所得補償制度
美しい農村風景はどこから来たか/大聖堂構築に似た共通農業政策の積み重ね/ドイツ、フランスとは違うイギリス農業/ニワトリが先かタマゴが先か

米櫃を空っぽにしても平気な日本人
よくもまあ下げたものだ/イギリスの後追いの日本/マーチャント国家・古代フェニキアの顛末/自由貿易信仰一辺倒の日本の歪み/農業再生には民主主義の再生が必要

日本を切り売りする自民党農政
自由貿易には落とし穴がある/六二%の日本切り売り

再び、ムラ論 ──X年X日の日記より
その一─農地を売る時/その二─農業の根本のところは何か/その三─ムラの様子/その四─ヤミ米をどう見るか/その五─生き方に悩む

▼詩 五編

トンボ

自然の音楽
大地の黙示録
豆つぶの農民

【第Ⅲ部】 戦争と植民地をめぐって

〔序〕植民地人としての「献身」

「流転坊」の父 ──日本人の膨張と縮小に重なる個人史
信玄袋をかついで/泰蔵兄を頼って台湾の学校へ進学/嘉義農林学校に入学/遠き地にて父の悲報を聞く/台湾は第二の故郷/鉄砲玉のように荒っぽい性格/さすらいの東京/魅力なき朝鮮/さあやるぞ!/暗雲垂れこめる/戦争に駆り立てられて/シベリア抑留五年

〔補遺〕父帰終記 ──青春の足跡

日本人として生き、日本人として死んでいった台湾の伯父
八田與一の再評価/近衛兵になった伯父/俺は任期の約束を果たした/嘉義消防署は我が子/受給資格の計算法/人となり⑴/二・二八事件について/人となり⑵/感謝の気持ちか中華思想か

丸川哲史著『台湾ナショナリズム』を読んで
「一つの中国」論を嫌う台湾/植民地近代化の二面性

白井聡著『永続敗戦論』を読んで
はじめに/詭弁の上に成り立つ戦後日本/ウソ話が日米従属の始まり/曖昧を好む日本人/どうやって「戦後」を破るのか

おわりに
著者年譜
著作一覧


著者より読者へ

日本は食料主権を放棄したかのようである。ここ何年も食料自給率は四〇%を下回り、ついに三八%にまで下げた。問題はここまで下げても、国内は泰平無事を決め込んでいることだ。国民も慣れっこになって「まあまあ主義」の落とし穴に入りこんでしまったようである。これではまるで、根っこの定まらない「流転坊」だ。

私はせめて、ヨーロッパ並みに最低支持価格や定住政策を行い、農家が安心して農業できる政策に転換して貰いたいと強く願う。突拍子もないと言われるかもしれないが、そのためにも食糧管理法の復活を訴えたいのである。この社会の根本を支える農業の大切さと、農民の生活が根っこに座れば、自給率も自然と上がっていく。そして農地法を違法に使った農地収用などという、三里塚の市東さんに対するような邪な考えも通用しなくなるはずである。

ヨーロッパを廻って感じた事は、市民と農家の権利意識である。手厚い所得補償が行われ農家が守られているが、底流にはこの権利意識がある。これはフランス革命のように王様の特権をはぎ取る「反独占」の市民革命を経験したか否かの違いによるらしい。残念ながら日本にはそれがなかった。

資本主義社会は、公平な競争や営業の自由を前提に成り立っている。だが今日、「公平な競争」も「自由」も強者の言葉である。強者のための「公平な競争」であり、強者のための「自由」である。

そして安倍一強と結びついた規制改革推進会議は、種子法廃止に見られるように多国籍企業の召使いになって新自由主義を実践し、われわれに暴論を押し付けている。弱肉強食を推進しており、これで格差が拡大し、民主主義はますます遠ざかって行くであろう。

反独占は政治闘争である。太平無事を決め込む今、政治闘争は死語になって仕舞ったかのようだ。だが、沖縄が頑張っている。三里塚も空港という巨大企業に負けてはいない。ここには「まあまあ主義」を排した、権利意識があるように思う。

坂本進一郎

※本書あとがきを転載


坂本進一郎(さかもと しんいちろう)1941 年 仙台市生まれ、5 歳まで満洲で育つ。1964 年 東北大学経済学部卒。北海道東北開発公庫に奉職。1969 年 北東公庫を退職し、八郎潟干拓地(大潟村)に入植。15ha の耕地を持つ稲作農家となるも、コメ過剰により減反政策が本格化。大潟村は政府の言う「過剰」作付けと青刈り、ヤミ米(食管法違反)と国による農地明け渡し訴訟など、農政による混乱の坩堝となった。著者は青刈り・減反に抵抗してきたが、食管制度護持の立場から減反を受け入れ、ヤミ米には反対した。その後、農政は自由化に向かい、食管法を廃止してコメの自由販売を制度化した。ガットやWTO の貿易交渉に反対してブリュッセル、香港、シアトルへ。FAO(国連食糧農業機関)の会議にも参加した。参議院地方公聴会や衆議院農林部会に公述人として招聘されるなど、農業現場からの発言が注目されてきた。

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