【かんからそんぐ】 岡大介さんの唄をきく ~唖蝉坊演歌に誘われて(2)

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カンカラ三線・演歌師、岡大介さんの唄う『かんからそんぐⅢ 籠の鳥・鳥取春陽』を聴きました。

このアルバムを室員は今週月曜日にはじめて手にしてから、何度もくり返し聴いています。お昼休みには歩きながらストトン、ストトン…と口ずさみました。帰宅しても夕食をとりながら流しました。夜更けの寝る前にもかけました。

耳で聞こえるフレーズと、歌詞カードをみて知る詞の文面とがちがっていたりするとおもしろく感じます。このアルバムにもいくつかそうしたフレーズがあります。おしつけてこない歌声と、歌詞と、演奏。聴き方がいくらでもあると思います。

アルバムを手に出来たのは、添田唖蝉坊(1872-1944)、添田知道(1902-1980)のつくった「演歌」を歌集として読む本『演歌の明治ン大正テキヤ』(小社刊)のご縁でした。添田二代の書いた歌詞は時事的な内容です。文字使いも古く、スンナリとは読めません。でもユニークなフレーズには現代社会にも通じる批判精神がつまっています。

昭和をとびこえて、「大正」(1912年~1926年)さらに前の「明治」(1868年~1912年)の時代に「演歌師」という人たちが活躍していました。大道や縁日に姿を見せ、政治批判に始まって庶民の生活、貧困の時代を唄い、歌詞をのせた本を売って生業としていたそうです。

岡大介さんはその「演歌師」たちが作った歌を、いまの時代にあわせて唄っています。『かんからそんぐⅢ 籠の鳥・鳥取春陽』は、大正時代に活躍した鳥取春陽(とっとり・しゅんよう)の作品にスポットをあてながら、ご自身のオリジナル作品や歌詞を織り交ぜながら、庶民が描かれる社会を唄いあげます。

いつの時代も、社会の大半が庶民です。ひとり一人は違う生活をして、違う気持ちで過ごすでしょうが、通じるところの多い生活を営みます。そこに社会は保たれています。ならばこそ、社会に起きる理不尽な出来事にはいっしょに腹を立てることができたり、悲しんだり、笑ったり喜んだりできる時があるわけです。

岡大介さんの歌声は、刹那的な気持ちを一瞬にして笑い飛ばせるような、気持ちの抜け道に導いてくれます。

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10月2日の木馬亭独演会『第8回 岡大介「浅草木馬亭独演会2016』のご案内。岡大介さんの情報はブログ「岡大介のお酒のめのめブログ」でご確認下さい。


室員の席がある事務所の辺りは連日、道路工事がかまびすしいかぎりです。そんな時でも近くの元町公園には先生に引率されて幼稚園児がやってきます。工事の掘削機の稼働音と、子どもたちの楽しげな歓声が窓の向こうから入ってくるなか、『かんからそんぐⅢ 籠の鳥・鳥取春陽』を聴きいています。

岡大介 かんからそんぐIII ~籠の鳥・鳥取春陽をうたう~ - ウインドウを閉じる

かんからそんぐⅢ 籠の鳥・鳥取春陽』アルバム収録曲:

1. 解放節
2. 籠の鳥
3. ヴェニスの船唄
4. すたれもの
5. ハートソング
6. みどり節
7. ストトン節2015
8. 大漁節
9. タマランソング
10. ホロホロ節
11. やっこらやのや
12. 陽はおちる
13. 抱いて寝る
14. さすらい
15. 思い出した


【室員メモ】(1)添田知道作曲のメロディでオープニング。つづいて岡さん自身の現代社会批判節で幕開けと鳥取春陽へのつながる一節。(2)鳥取春陽作曲。千野かほる作詞。ここから切ない声が続きます。(3)つづき刹那的ナンバー。高木青葉、後藤紫雲作詞、高木青葉作曲。昔書かれた歌詞だからこそ、聞き違いも心地よくできます(!?)。(4)鳥取春陽作曲。歌詞は野口雨情。30秒ほどの伴奏で旅先に誘われ、放浪の旅人が見えてきます。(5)一転、伴奏と歌声は別のシーンに。きなくさい空気と、小さな幸せを守る果敢な気持ち。渋谷白涙作詞、小鳥白雲作曲。(6)鳥取春陽作曲にして処女作。添田知道作詞。フレーズ「マッタクネ」がじんわり効きます。(7)添田知道の代表作に岡さんが作詞した軽快にしてシニカルな2015年ストトン節! 寄席で聴くような気分。まねしたくなるフレーズ沢山。(8)歌詞を読まないと空耳しやすい元気出る曲。室員には「大漁船」が「体力ねエ(無い)」に聞こえます。(9)鳥取春陽作曲。詞は春陽と岡さんのコラボ。歌声がのびて聞こえてとっても心地よい。酒の香りも漂っています。(10)どこかのおなじみの居酒屋でおなじみの酔客たちと手拍子でもりあがるオリジナル作品。(11)神長遼月の作詞作曲。手拍子と“箸”拍子と歌声だけで聴かせる演歌の魅力を知る1曲。宴会場で聞こえてきそうです。(12)唄い手が少年に戻ったような純真な歌声。鳥取春陽作曲、詞は渋谷白涙。(13)鳥取春陽作曲。優しげなメロディに娘、親父、女房、船頭、めかけ、坑夫、女郎、坊主、芸者、やもめ、議員の人生の断片が唄われます。添田知道、松崎ただし作詞。(14)岡さんが鳥取春陽をイメージしたオリジナル作品。(15)添田知道作詞、鳥取春陽作曲。岡さんが「初めて触れた“演歌”」とライナーノートにあります。岡少年がおばあちゃんと一緒に桜の下を歩くシーンを回想しながらアルバムの幕切れ。


 

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投稿者: 社会評論社 サイト

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