連載 ◎ [豊島区・長崎]センセイも歩いた椎名町 第2回 春近書店2代目・林博之さんに聞いた思い出話(1)

第2回 春近書店2代目・林博之さんに聞いた思い出話(1)

春近書店は、椎名町駅から商店街に歩いて行くと見つかります。古書を扱ってかれこれ70年をこす老舗のお店。いまの店主は、入ってタテ長の先の番台にワインレッドカラーのノートPCを扱いながら座ってましてその足もとに、食事中の番犬、トイプードルのクーちゃんもおります。

ご主人の方を向く春近書店の番犬クーちゃん(撮影・板垣)

林博之さんは細めのサングラスに髪をしっかりセットして、一見ホテルマンかデパートのバイヤーがお似合いですが、服装は実にラフでして、椎名町の下町感をかもしだしていらっしゃる。

その林さんが今から10年ほど前に、豊島区立中央図書館のPRカタログに寄稿した「屋号に込めた思い」には春近書店の来歴が凝縮されております。

「春近書店」は、戦後まもなく長野から上京した父が開いた古書店である。春近という屋号は、郷里の伊那市東春近村という地名からとったものだ。戦争の爪跡が残雪のように残る東京に居を構えたとき、凍てつく地の名に込められた希望が脳裏をよぎり、めぐり来る豊かな季節への期待を自らの店に馳せたのだった。

(豊島区立中央図書館報「図書館通信」第11号、「お店探訪〜春近書店〜店主 林博之さん」2009年掲載より)

僕がちょうど春近書店の思い出話をうかがいに向かった春先に、奇しくも伊那市にあるK書店から仕事先に電話が入りました。本の在庫の問い合わせで、

──すみません。その本はだいぶ前から品切れで、著者もすでに亡く、遺族も判らなくなってしまって、作り直すわけにもいきません。

お訊ねの本は実は僕も中身を見たことのない仕事先では珍しい静かな話題の本なのであります。仕事先に面倒を見てもらうことになった10年あまり前から品切れでして、ことあるごとにラジオ番組で引用されるようで、放送翌日には全国くまなく「読みたい」とのお電話が入る本です。

電話の向こうでK書店と名乗るので、きっとラジオを聴いたお客さんからの注文を問い合わせて下さったンだと思って応えますと、

「うちは、伊那市で戦前から本屋をやって来ました。それがこのところ商店街はシャッター通りになってしまいました。人が歩いていません。外商で何とかごまかしていますが、本当に厳しい。時代が変わってしまったかも知れません。そんな折、店の物を片付けていましたら、そちらの本の記事を見つけまして読んだら、きっと今の状況をのり越えられる勇気をもらえそうな気がして、電話しました。」

たま〜に、こうした人様の営みを電話で聞ける。出版社の醍醐味なのかも知れません。今すぐ倉庫に行って隅の隅まで探して本当に無いのかと気持ちがはやるのですが、この本については本当に無い。

──いただいた電話で失礼ですが、伊那市とおっしゃいましたが、春近をご存じではないですか?

「春近ですか‥‥? 昔は村でしたが今は、東春近、西春近地区と言っていますよ。ここから車で行けます。」

──実はいま、東京の、池袋の、椎名町で本屋を営む春近書店さんにお話を聞きに行っておりまして‥‥。

すると、K書店の女将さんは春近書店を知っていると返ってきたのでびっくり! 何度か行ったことありますっておっしゃる。春近書店は古書店だから、この本あるかしら、連絡先は判ります? 慌ててメモしておいた電話番号を伝えました。

それから林博之さんをあらためて訪れた折に、K書店の話になりました。

電話の声から思いもよらない80歳を越した現役の書店員の女将さん。本当に春近書店を知っていたそうで、女将さんのお姉さんが椎名町に暮らしてて、何度か伊那市から来た折に商店街を歩いてたら商売柄もあって覗いてみたそうです。

豊島区長崎の椎名町駅中央通り商店街の通りに並ぶ春近書店の近くには夕方ならちょっと一杯‥‥と、ほろよいたくなる昭和の風情と、新しめのお店がぎゅっとつまった一画で、歩くだけでも楽しくなりますナ。

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 紹 介

春 近 書 店 haruchika-shoten

「日本の古本屋」URL:
https://www.kosho.or.jp/abouts/?id=12060470
「椎名町.com」URL:
http://www.shiinamachi.com/shop/chuou/harukin-book/index.html

住所:東京都豊島区長崎1-5-2
営業時間:12時〜20時
定休日:月曜日・特例として大雨の日
mail:harutika@qg8.so-net.ne.jp
TEL:03-3957-5454
FAX : 03-3530-5315

夜の春近書店(撮影 板垣)

文責・板垣誠一郎

2018年7月配信開始!
センセイも歩いた椎名町

第1回 ピカピカの町の本屋さん 
第2回 春近書店2代目・林博之さんに聞いた思い出話(1)
第3回 春近書店2代目・林博之さんに聞いた思い出話(2)駅から長崎神社の縁日へ…



 

投稿者: 社会評論社 公式ブログ - 目録準備室 -

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