||目次詳細|| 田上孝一/著『マルクス哲学入門 』


今、マルクスを読む意義


昨今巷ではカール・マルクス(1818 ~ 1883)への入門書の類が大量に出回っている。

積年の研究を重ねた専門家による真摯な著作もあるが、それより多く見かけるのは、素人による安易な『資本論』入門講座の類である。

『資本論』の入門書であるにもかかわらず、著者が当の『資本論』と格闘した形跡は見られず、『資本論』に基いた経済原論をさらに水で薄めたような代物である。

このような「入門書」には大抵、マルクスを論じているのに、そもそもマルクスがどのような理論家であったのか、マルクスの全理論的な著作を貫く根本的な理論的立場は何かという問への明確な回答がない。

そうした提言をするには、マルクスの主要著作に対する付け焼刃でない取り組みが必要であり、それこそ素人の成せる業ではないからだ。

この本では、巷に溢れる安直な「マルクス本」とは対照的に、マルクスが理論家として何を求め、どのような視座から彼の主要な認識対象である資本主義社会と、そこに生きる人間を見つめていたのかを探求する。

これはまさに、マルクス思想全体の哲学的核心を明確にしようという試みでもある。

というのは、マルクスの哲学は後の後継者によって作り上げられた「マルクス主義哲学」とは異なり、彼の終始一貫した考察対象である資本主義社会の分析と批判のための基本視座として練り上げられたものだからである。

その哲学とは疎外論である。だから本書は、疎外論であるマルクス哲学の理論的射程を、マルクスのテキストにまだ親しんでいない読者にも分かるように、平易に解説していこうという試みだといえる。

著者

※本書「序章」抜粋



マルクス哲学入門
田上孝一/著

A5判並製・133頁 定価=本体1700円+税
ISBN978-4-7845-1564-6 C0030 2018年4月刊


目次

序章  今、マルクスを読む意義

求められるマルクス
意外な現代性
マルクスの読み方マルクスの研究スタイル
マルクスの自分語り

第1章  マルクスの哲学とマルクス主義哲学

マルクスとその哲学の運命
マルクス哲学の再生

第2章  「 アリアドネの糸」としての「定式」 ─『経済学批判』の「序言」

初めからあった問題意識
物質的利害とヘーゲル主義
定式の基本観点はいつ獲得されたのか
二つの矛盾する言葉
マルクスの時代区分
プロレタリアート独裁の時期
生産力主義の問題
マルクスは自分を何者だと思っていたのか

第3章   理想と現実の模索から自由の追求へ ─青年マルクスの思想展開─

マルクスの理論的生涯を貫く根本的な問題設定
学位論文の重要性
決定論との対決
エピクロスの原子論
パレンクリシスの捉え返し
エピクロスのユートピアとマルクスによるその拒絶
学位論文から「ライン新聞」へ
歴史の皮肉

第4章   唯物論とプロレタリアートとの出会い ─『独仏年誌』の中心に─

マルクスと唯物論
宗教の社会的起源
プロレタリアートの発見
マルクス主義における人間概念の運命

第5章   疎外された労働の分析 ─『経済学・哲学草稿』の理論世界─

なぜ労働の分析なのか
対象化としての労働
疎外された労働
疎外されない労働
疎外の原因

第6章   疎外の止揚と分業 ─『ドイツ・イデオロギー』の真実─

疎外の原因としての分業
疎外の止揚の具体的イメージ
唯物史観の真実

第7章  『資本論』の哲学 ─疎外・物象化・物神崇拝─

『資本論』の叙述方法とその問題点
資本とは何か
商品化と疎外
商品化による物件化
手の作り物への崇拝

第8章  『ゴータ綱領批判』の共産主義論

ポスト資本主義の展望
マルクスの理想
ゲノッセンシャフトリヒな富
兄弟的で仲間的な富
マルクスと環境の親和性

第9章  マルクスとエンゲルスの関係

エンゲルスのマルクス像
エンゲルスによるマルクスの神話化
疑似科学としての「科学的社会主義」
本来の科学的な社会主義へ

第10 章 マルクスと現実社会主義

主体の客体への転倒
資本主義とは何か
現実社会主義とは何か

第11 章  マルクスと環境問題

地球の有限性に対する意識
労働過程論に含意される人間観
成長主義と生産力の制御


著者略歴

田上孝一(たがみ こういち)
1967 年 東京生まれ
1989 年 法政大学文学部哲学科卒業
1991 年 立正大学大学院文学研究科哲学専攻修士課程修了
2000 年 博士(文学)(立正大学)
哲学・倫理学専攻
現在 立正大学非常勤講師・立正大学人文科学研究所研究員

主要著書
『初期マルクスの疎外論─疎外論超克説批判─』(時潮社、2000年)
『実践の環境倫理学─肉食・タバコ・クルマ社会へのオルタナティヴ─』(時潮社、2006 年)
『フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる倫理学』(日本実業出版社、2010 年)
『マルクス疎外論の諸相』(時潮社、2013 年)
『マルクス疎外論の視座』(本の泉社、2015 年)
『環境と動物の倫理』(本の泉社、2017 年)
『権利の哲学入門』(編著、社会評論社、2017 年)

購入サイト(外部リンク)

||内容詳細|| 田上孝一編著『権利の哲学入門』

 

 

投稿者: 社会評論社 公式ブログ - 目録準備室 -

【社会評論社】メール book@shahyo.com 時事問題に取り組む活動記録、評論、学術書、ルポルタージュほか、ひとりひとりが見る世界の面白さを伝える本作りを心がけています。