第4回 博物館活動を通じた復興への積極的な関与(後)─加藤幸治/著『復興キュレーション 』より

タイトル絵・加藤伸幸画より

東北学院大学・加藤幸治氏の著作『復興キュレーション – 語りのオーナーシップで作り伝える〝くじらまち〟 (キオクのヒキダシ2)』より、冒頭の「はじめに」をお読みいただけます。(全5回)第4回 博物館活動を通じた復興への積極的な関与(後)

第4回
博物館活動を通じた復興への積極的な関与(後)

加藤幸治
(東北学院大学)

 

加えて、復旧から復興にいたる時期をポスト文化財レスキュー期とわたしは呼んでいますが、地域の人々はこの時期、これまでの何を残し、何を新たに作るかの判断をいくつも迫られます。そうしたなかで、地域における歴史や自然、文化に対して様々な意味付与が行われ、あるものは復興の象徴やモニュメントとなり、あるものは忘れられていきます。大震災の爪痕を残そうとする震災遺構をめぐる賛否両論はその典型的な例です。そうした価値がゆらぐ時期だからこそ、被災地には博物館活動が求められるのです。被災した博物館や公民館の活動休止によって生まれる博物館空白は、「文化創造のインタラクション」を阻害するもっとも根本的な要因です。本書『復興キュレーション』では博物館空白を埋める手法のひとつとして、被災地で資料を展示し、地域の方々から使用方法や道具にまつわる思い出について聞書きを行ったり、ワークショップを行ったりする、移動博物館の実践を紹介します。

民俗学におけるフィールド・ワークは、人々の生活の歴史的展開を明らかにしつつ、それが現代社会のいかなる問題につながっているかを、現場に身をおいて思索を深めるものです。そのために聞き取り調査や参与観察、文献や民具調査等を行うわけですが、調査そのものが地域の文化的な価値掘り起こしとしての性格をもっています。そのため、調査に協力する地域の人々の側にも、様々な意味や価値の転換が起こっていきます。研究者の調査によって、それまで地域では意味を見出されてこなかったものに光があたり、それが文化資源として地域づくりや文化財保護などの方向に展開したり、特定のものが名物化したり、祭や儀礼のあり方の変化を加速してしまったりする場合もあります。さらにより戦略的に地域住民が研究者やその成果を利用したり、研究とは異なる文脈で活用したりすることもよくあることです。また、資料収集や展示をすることで、モノの価値に優劣がついたり、特定のものにお墨付きを与えたりしまうこともあり、はからずも博物館がそれに加担してしまうケースもよくあります。

わたしも実際にそうしたことを経験してきましたが、しかし文化的な実践とはそういう影響をはらんでいるもので、こうした動きを研究の側から一方的に憤っても仕方がないとも考えてきました。研究における文化の価値と、地域の人々における文化の価値は、概してすれ違っているものです。であるならば、そうした状況に対し、積極的に関与していくために研究者はどう行動していくべきか、「文化創造のインタラクション」はそれを考えるための研究の枠組みです。震災復興におけるポスト文化財レスキュー期は、そうした実践が求められる時間なのです。

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第1回 震災復興と人文学の葛藤
第2回 ミュージアムとコレクションの復旧
第3回 博物館活動を通じた復興への積極的な関与(前)
第4回 博物館活動を通じた復興への積極的な関与(後)
第5回 フィールドの地域概要

■著者紹介 : 加藤幸治(かとうこうじ)東北学院大学文学部歴史学科教授・同大学博物館学芸員。専門は民俗学、とくに物質文化論。静岡県出身。総合研究大学院大学文化科学研究科比較文化学専攻(国立民族学博物館に設置)修了、博士(文学)の学位取得。第17回日本民具学会研究奨励賞(2003年)・第21回近畿民具学会小谷賞(2003年)・第16回総合研究大学院大学研究賞(2011年)を受賞。現在、文化遺産防災ネットワーク有識者会議委員、日本民俗学会第31期理事、日本民具学会第17期理事ほかを務める。主な著作として、単著に『郷土玩具の新解釈 無意識の“郷愁”はなぜ生まれたか』(社会評論社、2011年)、『紀伊半島の民俗誌 技術と道具の物質文化論』(社会評論社、2012年)、共著に 国立歴史民俗博物館編『被災地の博物館に聞く』(吉川弘文館、2012年)、日高真吾編『記憶をつなぐ 津波災害と文化遺産』(財団法人千里文化財団、2012年)、橋本裕之・林勲男編『災害文化の継承と創造』(臨川書店、2016年)ほかがある。

加藤幸治/著『復興キュレーション ─語りのオーナーシップで作り伝える〝くじらまち〟』目次詳細

書評掲載 加藤幸治/著『復興キュレーション – 語りのオーナーシップで作り伝える〝くじらまち〟』

 

投稿者: 社会評論社 公式ブログ - 目録準備室 -

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