第3回 博物館活動を通じた復興への積極的な関与(前) ─加藤幸治/著『復興キュレーション 』より

タイトル絵・加藤伸幸画より

東北学院大学・加藤幸治氏の著作『復興キュレーション – 語りのオーナーシップで作り伝える〝くじらまち〟 (キオクのヒキダシ2)』より、冒頭の「はじめに」をお読みいただけます。(全5回)第3回 博物館活動を通じた復興への積極的な関与(前)

第3回
博物館活動を通じた復興への積極的な関与(前)

加藤幸治
(東北学院大学)

 

大震災以来、わたしが取り組んできたもうひとつの仕事である、博物館活動を通じた復興への積極的な関与については、震災の翌年から民俗学を専攻する大学生とともに継続的に行ってきている被災地での移動博物館を紹介します。わたしは、被災地で復旧したコレクションを素材とした文化創造活動を「復興キュレーション」と名づけています。

キュレーションとは、まだまだ耳慣れない言葉ではないでしょうか。学芸員のことを英語でキュレーターと呼びますが、その学芸員はモノや情報を、収集・整理・分類・保存・管理し、市民が活用できるようにするのが仕事です。そして、蓄積した情報を社会に普及したり、その魅力を知ってもらうための展示をしたりして、新たな価値を投げかけるのも重要な仕事です。こうした一連の仕事をキュレーションと呼びます。この言葉はおそらく和製英語ですが、海外の研究者との会話でキュレーションという言葉を少し補足しながら使うと、“言い得て妙だ”といった表情をされた経験が何度かあります。キュレーションという言葉は、情報の収集・整理・分類・保存・管理、そしてそれを意味ある形で社会に提示する活動を指す言葉として、広く浸透してほしい言葉です。

「復興キュレーション」において、わたしは文化財レスキューをモノの復旧にとどめることなく、むしろフィールド・ワークのひとつのアプローチとして再定義したいと考えています。そのために必要なのは、レスキューする専門家─地域住民、救われる財─救う対象にならないモノ、文化財─生活財、残すもの─残さないもの、形のあるもの─形のないものといった、文化財レスキューの前提となるあらゆる二項対立を超えていくような思考の転換です。

わたしは現代のミュージアムに求められているのは、専門知を背景に研究者が見出した価値を市民に普及するばかりでなく、コミュニティの維持や発展において地域の人々が大切にしたいものや、状況の推移のなかで新たな意味や価値を見出していくものを、研究者が受けとめていくような、相互作用だと考えてきました。わたしは、こうした相互作用を「文化創造のインタラクション」と名づけています。

インタラクションとは、相互作用あるいは交互作用と訳され、2つ以上のものが双方向に作用しあうことを意味する言葉です。「文化創造のインタラクション」とは、調査研究による成果を地域の人々に提示する展示などの場において、逆に地域の人々から新たな提案やアイデアが沸き上がり、それを研究者が引き受けてさらに調査研究をして提示するといった、双方向な関係が動き続ける文化創造活動を念頭に置いています。

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第1回 震災復興と人文学の葛藤
第2回 ミュージアムとコレクションの復旧
第3回 博物館活動を通じた復興への積極的な関与(前)
第4回 博物館活動を通じた復興への積極的な関与(後)
第5回 フィールドの地域概要

■著者紹介 : 加藤幸治(かとうこうじ)東北学院大学文学部歴史学科教授・同大学博物館学芸員。専門は民俗学、とくに物質文化論。静岡県出身。総合研究大学院大学文化科学研究科比較文化学専攻(国立民族学博物館に設置)修了、博士(文学)の学位取得。第17回日本民具学会研究奨励賞(2003年)・第21回近畿民具学会小谷賞(2003年)・第16回総合研究大学院大学研究賞(2011年)を受賞。現在、文化遺産防災ネットワーク有識者会議委員、日本民俗学会第31期理事、日本民具学会第17期理事ほかを務める。主な著作として、単著に『郷土玩具の新解釈 無意識の“郷愁”はなぜ生まれたか』(社会評論社、2011年)、『紀伊半島の民俗誌 技術と道具の物質文化論』(社会評論社、2012年)、共著に 国立歴史民俗博物館編『被災地の博物館に聞く』(吉川弘文館、2012年)、日高真吾編『記憶をつなぐ 津波災害と文化遺産』(財団法人千里文化財団、2012年)、橋本裕之・林勲男編『災害文化の継承と創造』(臨川書店、2016年)ほかがある。

加藤幸治/著『復興キュレーション ─語りのオーナーシップで作り伝える〝くじらまち〟』目次詳細

書評掲載 加藤幸治/著『復興キュレーション – 語りのオーナーシップで作り伝える〝くじらまち〟』

 

投稿者: 社会評論社 公式ブログ - 目録準備室 -

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