第2回 ミュージアムとコレクションの復旧 ─加藤幸治/著『復興キュレーション 』より

タイトル絵・加藤伸幸画より

東北学院大学・加藤幸治氏の著作『復興キュレーション – 語りのオーナーシップで作り伝える〝くじらまち〟 (キオクのヒキダシ2)』より、冒頭の「はじめに」をお読みいただけます。(全5回)第2回 ミュージアムとコレクションの復旧

第2回
ミュージアムとコレクションの復旧

加藤幸治
(東北学院大学)

 

東日本大震災として歴史に刻まれたこの災害の全体像のなかには、文化財や博物館のコレクション等の大規模な被災が含まれています。東日本大震災で行われたこれらの救援活動、いわゆる文化財レスキューの現場は、宮城県だけでも50か所を超え、岩手・福島・茨城・長野各県もあわせると100か所弱を数えます。1つの災害でまたたく間にこれほど多くのミュージアムや収蔵庫が壊滅的な被害に見舞われた例は、世界的にも類を見ない事態でした。

東日本大震災における文化財レスキューでは、文化財保護法において指定された文化財や美術品のみならず、自治体や博物館、公民館等が所蔵する現用文書から古文書、民具、考古遺物、昆虫や動植物の自然史標本に至るまで、広範な文化的な“財”が市町村の救援要請をうけてレスキュー対象となりました。そして現在も、資料の保全作業や施設のリニューアルに向けた仕事が進められています。ミュージアムとそのコレクションの復旧は、博物館の基本的な使命をまっとうすることに直結しています。具体的には、市民が歴史や自然、文化を理解したり、コミュニティにおける価値創造のための実践的な活動をしたりするために、欠くことのできない文化的な“財”を、見出し、保存し、後世に継承するという使命です。わたしたち学芸員は、市民から負託されてその活動を担っています。

本書で詳述するように、わたしの勤務する東北学院大学(宮城県仙台市)は、大学博物館を窓口として、盗難と劣化が懸念される被災資料を受け入れる「一時保管施設」となりました。担当することとなった石巻市鮎川収蔵庫は、三陸海岸の南端にあたる牡鹿半島の先端に近い場所に位置していました。東日本大震災では、8.6メートルの津波を受け、屋根まで水没して壊滅していました。収蔵資料の内容は、2005年に石巻市と合併する前の旧牡鹿町が蓄積した考古・民俗・地学資料を中心としたコレクションです。半島部は乗用車でのアクセスが悪く、現地での文化財レスキューの手を入れることができたのは、震災から3か月後の6月に入ってからでした。その後、およそ半年かけて4トントラックで8台分の資料を、仙台市にある東北学院大学に移送したのです。被災資料の保全作業は、本学歴史学科の大学生があたりました。全国の10校以上の大学から、のべ500人を超えるボランティアも参加してもらい、本学の学生・院生とともに津波で被災した資料のクリーニング作業を行ったのです。脱塩作業や二酸化炭素殺虫処理、修復、民俗資料台帳の作成という一連の作業は、2016年3月までの5年間で終え、一時保管した被災資料を石巻市の仮収蔵庫へ返却することができました。

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第1回 震災復興と人文学の葛藤
第2回 ミュージアムとコレクションの復旧
第3回 博物館活動を通じた復興への積極的な関与(前)
第4回 博物館活動を通じた復興への積極的な関与(後)
第5回 フィールドの地域概要

■著者紹介 : 加藤幸治(かとうこうじ)東北学院大学文学部歴史学科教授・同大学博物館学芸員。専門は民俗学、とくに物質文化論。静岡県出身。総合研究大学院大学文化科学研究科比較文化学専攻(国立民族学博物館に設置)修了、博士(文学)の学位取得。第17回日本民具学会研究奨励賞(2003年)・第21回近畿民具学会小谷賞(2003年)・第16回総合研究大学院大学研究賞(2011年)を受賞。現在、文化遺産防災ネットワーク有識者会議委員、日本民俗学会第31期理事、日本民具学会第17期理事ほかを務める。主な著作として、単著に『郷土玩具の新解釈 無意識の“郷愁”はなぜ生まれたか』(社会評論社、2011年)、『紀伊半島の民俗誌 技術と道具の物質文化論』(社会評論社、2012年)、共著に 国立歴史民俗博物館編『被災地の博物館に聞く』(吉川弘文館、2012年)、日高真吾編『記憶をつなぐ 津波災害と文化遺産』(財団法人千里文化財団、2012年)、橋本裕之・林勲男編『災害文化の継承と創造』(臨川書店、2016年)ほかがある。

加藤幸治/著『復興キュレーション ─語りのオーナーシップで作り伝える〝くじらまち〟』目次詳細

書評掲載 加藤幸治/著『復興キュレーション – 語りのオーナーシップで作り伝える〝くじらまち〟』

 

投稿者: 社会評論社 公式ブログ - 目録準備室 -

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