寺院に残された写真群を駆使して、僧侶たちの日中近代史をビジュアル化 ─『方鏡山淨圓寺所蔵 藤井靜宣写真集』『鳥居観音所蔵 水野梅暁写真集』

東亜同文書院と近代中国、近代日中関係、さらには戦前の在外高等教育機関を総合的に研究し紹介することを目的とする「愛知大学・東亜同文書院大学記念センター」のシリーズとして、希有な人物写真群『方鏡山淨圓寺所蔵 藤井靜宣写真集 ─近代日中仏教提携の実像─』が刊行されました。昨年刊行の『鳥居観音所蔵水野梅暁写真集 ─仏教を通じた日中提携の模索─』とともに内容をご案内いたします。

【愛知大学東亜同文書院大学記念センターシリーズ】
新刊・既刊ご案内

ごあいさつ

愛知大学東亜同文書院大学記念センター長
三好 章

 愛知大学には、大きな前身のひとつに東亜同文書院大学があります。東亜同文書院大学は、1901 年に創立され、1939 年に専門学校から大学に昇格し、1945 年8 月まで中国上海にあった日本の国立高等教育機関でした。

東亜同文書院は初代院長根津一以来、教員学生ともども、清末・民国期の中国と深く関わってきました。東亜同文書院は1890 年に上海に置かれた日清貿易研究所を前身とするビジネススクールであり、創設以来中国に即した中国理解を進めようとしました。その根柢には根津の盟友であった荒尾精による、対等な日中関係の構築というひとつのアジア主義がありました。そうした精神で教育を受けた書院生卒業生は、中国を始めとしてアジア各地は言うに及ばず、世界中で活躍しました。書院生による「卒業大旅行」では、中国はもとより、東南アジアからシベリアまで足を運び、自らの目で見、手を動かし、資料を収拾してきました。それは『支那省別全誌』などに結実し、今なお高い評価を得ています。

現在、愛知大学東亜同文書院大学記念センターは、そうした書院と近代中国、近代日中関係を再考し、愛知大学と東亜同文書院、さらに戦前の在外高等教育機関を総合的に研究することを重要な目的としております。

このたび、愛知大学東亜同文書院大学記念センターシリーズの一巻として『藤井靜宣写真集』を刊行致しました。これは、昨年刊行した『水野梅暁写真集』に続くものです。水野梅暁の弟子にあたる藤井靜宣もまた、師と同じく戦前の上海で東亜同文書院に学び、中国との関わりを持ち続けました。藤井自身、水野同様僧籍にあり、仏教を通して中国と関わり続け、大戦中は中国での事実を語ったことを反軍的な言動とされ、特高に逮捕されたことがありました。

本書は、愛知大学東亜同文書院大学記念センターによる文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「東亜同文書院を軸とした近代日中関係史の新たな構築」研究プロジェクトの成果の一つです。プロジェクトメンバーである広中一成君と長谷川怜君を中心に、藤井靜宣が住職を務めた寺である豊橋淨圓寺の庫裏に収められた数多くの写真を整理したものです。写真以外の書簡なども、近代日中関係を見直す上で重要なものですので、これらも整理し、公開できるよう作業を進めています。

愛知大学東亜同文書院大学記念センターでは、研究の成果を幅広く紹介するための出版活動のほか、愛知大学豊橋校舎敷地内に常設の展示施設を設けております。本書を通じて、東亜同文書院と近代日中関係に関心を持たれる方が増えると同時に、多くの方々が当センターに直接足をお運び戴けることを念じております。

2017 年3 月

 次ページは、『方鏡山淨圓寺所蔵 藤井靜宣写真集 ─近代日中仏教提携の実像─』

投稿者: 社会評論社・目録準備室

【社会評論社】●時事問題に取り組む活動記録、評論、学術書、ルポルタージュほか多岐に渡る図書を発行。市民の立場から世界を見る面白さがつまった本作りを心がけています。メール book@shahyo.com