||内容詳細|| 田上孝一編著『権利の哲学入門』

田上孝一編著『権利の哲学入門』が刊行になりました。20編にわたる論考の目次と、編者序文の抜粋をご案内いたします。


編者序文(抜粋)


本書の第一部では権利の思想史を試みた。ここでは権利を中心課題とした思想家でまとめたのではなく、西洋哲学史上重要な哲学者が、権利をどう捕らえていたかという面に焦点を当てた。その意味で第一部の各章は、権利を視軸にした哲学史の試みといえる。言うまでもなく、僅か10章で代表的な哲学者を網羅することはできない。そこには不足がある。しかし権利という統一的な観点から哲学史をまとめることそれ自体に、独自の理論的意義があるのではないかと、我々は信じている。

第二部は現代において権利を考えるに当たって重要だと思われる幾つかの論点を取上げた。現代の政治哲学において権利はどう取り扱われているのか、女性や患者の権利のような、その重要性がコンセンサスを得ている問題に加えて、将来世代や動物の権利のように、広く認知されているとはいいがたい問題も扱った。当然ここにも漏れや不足はあろう。しかしこの10章は、権利の現在を考えるための有益な示唆になりえていると、我々は考えている。

こうして本書は権利の哲学への一つの入門を目指している。とはいえ、本書は文字通りの入門書とはいささか毛色が異なる。文字通りの入門書ならば、定説的な解釈を教科書風に無難にまとめるのが通常の作法だろう。しかし本書には通説とは大いに異なる諸説も含まれている。その意味で本書には、何か一定の方向に読者を誘導するような目論見はない。我々が願うのは、読者に問題を提起し、読者なりの権利観を構築するのに資するような、一つの知的刺激となることのみである。従って本書の掲げる「入門」は、読者が権利を考えるための一つのきっかけになればという、ささやかな意図からのものである。

(田上孝一)

田上孝一/編著
権利の哲学入門

A5判並製・320頁 定価=本体2,500円+税

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第Ⅰ部 ◆ 権利の思想史


第1章 アリストテレスの権利論 ──『政治学』第3巻を中心に

石野敬太

はじめに
1.「家」および「ポリス」の成立と「善き生」
2.「市民」とは誰か──『政治学』第3巻第1章の考察
3.「配分的正義」と公職の配分
4.市民の政治参加の正当化──『政治学』第3巻第11章の考察
おわりに

石野敬太(いしの けいた)早稲田大学大学院政治学研究科政治学コース(政治思想・政治史研究)博士後期課程 政治哲学・政治思想史専攻
主要業績「アリストテレス『哲学のすすめ(Protrepticus)』における「観照」と「実践」」(西洋古典研究会『西洋古典研究会論集』第23号、2014年)、「アリストテレス『政治学』第8巻における教育:音楽教育と「理解力」の涵養」(西洋古典研究会『西洋古典研究会論集』第24号、2015年)


第2章 古代ローマにおける市民権と自由

鷲田睦朗

はじめに
1.市民権と自由の拡大から見たローマ国家の発展の概略
2.ローマ政治思想における2つの自由
3.共和政ローマにおける市民権と自由──公職選挙の観点から
おわりに

鷲田睦朗(わしだ むつろう)大阪国際大学・京都橘大学非常勤講師 古代ローマ史専攻
主要業績 『カティリーナの陰謀』(共訳、大阪大学出版会、2008年)、「インゲニウム考─ローマ共和政後期における「競争的な政治文化」との整合性を中心に─」(大阪大学大学院文学研究科編『待兼山論叢』史学篇48号、2014年)、「「音楽堂のウィッラ」とウィッラ経済の進展─ラティフンディウム論再考─」大阪大学西洋史学会編『パブリック・ヒストリー』13号、2016年)


第3章 トマス・アクィナスにおける私的所有権

川本 愛

はじめに
1.法について
 法の定義/法の部分
2.自然法の可変性:私的所有の場合
3.所有について
4.私的所有の「権利」は存在するのか?
おわりに

川本 愛(かわもと あい)京都大学非常勤講師 哲学史専攻
主要業績 「ゼノン『国家』における「ポリス」の再定義」(古代哲学研究会編『古代哲学研究 (METHODOS)』、45号、古代哲学研究会、2013年)、「ストア派における「全人類の協同関係」という概念の形成─知者の国家から全人類の協同関係へ?─」(関西哲学会編『アルケー』22号、関西哲学会、2014年)、「ストア派の倫理学における行為と規則について」(日本西洋古典学会編『西洋古典学研究』63号、岩波書店、2015年)


第4章 ホッブズの権利論

新村 聡

はじめに
1.ホッブズ権利論の課題と方法
グロチウスの権利論とホッブズの課題 /仮説的契約論 /仮説的消去法
2.ホッブズ権利論の構造
自然状態 /基本的自然法 /第2自然法 /私的権利の成立
3 近代的な分配的正義の成立
分配的正義の転換と自己保存の必要物の所有権 /労働成果の所有権と所得再分配
おわりに

新村 聡(にいむら さとし)岡山大学大学院社会文化科学研究科教授 経済学史専攻 博士(経済学)
主要業績 『経済学の成立─アダム・スミスと近代自然法学─』(御茶の水書房、1994年)、「平等と不平等の経済学─新自由主義的〈平等〉と福祉国家的〈平等〉の対立─」(経済理論学会編『季刊・経済理論』第43巻第1号、桜井書店、2006年)、「アダム・スミスの平等論と分配的正義論」(『立教経済学研究』第69巻第4号、立教大学、2016年)


第5章 ロックの権利論

小城拓理

はじめに
1自然権論
自然状態と自然法 /自然権
2.社会契約論
統治の目的
3.革命権論
おわりに

小城拓理(こじょう たくみち)1978年生まれ 愛知学院大学総合政策学部講師 哲学・倫理学専攻 博士(文学)
主要業績 『ロック倫理学の再生』(晃洋書房、2017年)、『未来の大学教員を育てる―京大文学部・プレFDの挑戦』(共著、勁草書房、2013年)、『妊娠中絶の生命倫理』(共訳、勁草書房、2011年)


第6章 ルソーの権利論

吉田修馬

はじめに
1.自然状態
2.権利の基礎
3.権利の全面譲渡
4.人民主権
5.代議制批判
おわりに

吉田修馬(よしだ しゅうま) 東京大学医学系研究科医療倫理学分野特任研究員 哲学・倫理学専攻
主要業績 『テーマで読み解く生命倫理』(共編著、教育出版、2016年)、『入門・倫理学の歴史─24人の思想家─』(共著、梓出版社、2016年)、「『人間不平等起源論』における「自然的善性」の問題」(日仏哲学会『フランス哲学・思想研究』第18号、2013年)


第7章 カントの権利論

網谷壮介

はじめに
1.倫理と法
2.生得的な自由の権利
3.取得的な権利
おわりに

網谷壮介(あみたに そうすけ) 東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程単位取得満期退学 政治思想史・政治理論専攻
主要業績 「政治・道徳・怜悧:カントと執行する法論」『政治思想研究』第14号(風行社、2014年)、「カントと許容法則の挑戦:どうでもよいこと・例外・暫定性」『法と哲学』創刊号(信山社、2015年)、「カントの共和制の諸構想と代表の概念」『社会思想史研究』第40号(藤原書店、2016年)


第8章 J. S. ミルの権利論

小沢佳史

はじめに
1.ミルの功利主義
2.ミルにおける権利──功利主義による権利の基礎付け
「権利」という言葉の意味 /事実上の生存権─生命維持の社会的な保証
3.ミルにおける自由──功利主義による自由の基礎付け
おわりに

小沢佳史(おざわ よしふみ) 東北大学大学院経済学研究科博士研究員 経済学専攻 博士(経済学)
主要業績 「停止状態に関するJ. S. ミルの展望─アソシエーション論の変遷と理想的な停止状態の実現過程─」(経済理論学会編『季刊・経済理論』第49巻第4号、桜井書店、2013年)、「J. S. ミルの保護貿易政策論─一時的な保護関税をめぐって─」(マルサス学会編『マルサス学会年報』第23号、雄松堂書店、2014年)


第9章 ヘーゲルの権利論

荒川幸也

はじめに
1.ドイツ語のRechtと日本語の「権利」
2.「権利の基礎」に位置付けられた「自由な意志」
3.「家族」における権利
4.「ポリツァイとコルポラツィオン」における権利
おわりに

荒川幸也(あらかわ さきや)在野研究者 哲学・倫理学専攻
主要業績 「マルクス『ヘーゲル国法論批判』(1843年)─マルクスのヘーゲル批判と反ドグマ主義─」(『季報 唯物論研究』第124号、2013年)

第10章 マルクスの権利論

松井 暁

はじめに
1.進歩性
2.歴史性
3.不定性
4.権力性
5.分断性
6.疎外性
7.二面性
おわりに

松井 暁(まつい さとし) 専修大学経済学部教授 社会哲学専攻 博士(経済学)
主要業績 『自由主義と社会主義の規範理論:価値理念のマルクス的分析』(大月書店、2012年)、『アナリティカル・マルキシズム』(編著、ナカニシヤ出版、1999年)、『ポスト・リベラリズム:社会的規範理論への招待』(編著、ナカニシヤ出版、2000年)

 


第Ⅱ部 ◆ 現代の権利論


第11章 現代リベラリズムにおける権利

髙木智史

はじめに
1.道徳的権利
2.ロールズとノージック
ロールズによる福祉国家の擁護 /ノージックによる批判
3.積極的権利と消極的権利
消極的権利と共存可能性 /積極的権利と権利衝突
4.集団の権利
集団と権利能力 /集団の権利と集合的利益
5.個人的権利と集団の権利
おわりに

髙木智史(たかぎ ともふみ) 一橋大学大学院法学研究科博士後期課程 法哲学専攻


第12章 権利の正当化 ─権利基底的道徳の議論から

伊藤克彦

はじめに
1.二つの予備作業
法的権利と道徳的権利/功利主義、義務論、権利
2.マッキーの権利基底的道徳
義務基底的道徳と目的基底的道徳への批判/マッキーの議論の問題
3.権利の正当化を否定する見解
文化相対主義 /共同体主義
4.権利の正当化の方法を論じる議論
ゲワースの「類的権利」/自然主義による説明/グリフィンの「知覚アプローチ」/ニーズとケイパビリティ
おわりに

伊藤克彦(いとう かつひこ) 和光大学現代人間学部非常勤講師 法哲学専攻 博士(法学)
主要業績 「ホーリズムの法哲学的意義と可能性」(『一橋法学』6号3巻、一橋大学大学院法学研究科、2007年) 、「還元不可能な概念としてのニーズ」(『一橋法学』12号1巻、一橋大学大学院法学研究科、2013年)、「本質的に論争的な概念をめぐって」(『一橋法学』第15号1巻、一橋大学大学院法学研究科、2016年)


第13章 民主主義と自由への権利

玉手慎太郎

はじめに
1.センの権利観
積極的自由の実現への要求 /認知と実現の区別 /民主主義と権利の相互作用2.潜在能力アプローチ
ベーシック・ニーズ /潜在能力アプローチ /基礎的潜在能力への要請
3.基礎的潜在能力の具体的内容
基礎的潜在能力のリスト化 /コンセプトとコンセプション /コンセプトとしての基礎的潜在能力
おわりに

玉手慎太郎(たまて しんたろう)東京大学大学院医学系研究科医療倫理学分野特任研究員 経済学専攻 博士(経済学)
主要業績 「経済学における価値判断の2つの位置:センとロビンズの比較から」(経済理論学会編『季刊経済理論』49巻3号, 桜井書店,2012年)、“Pasinetti after Sen: Towards a Capability Approach to Structural Dynamics of Consumption”(Metroeconomica, Volume 65, Issue 4, 2014, 共著)、”External Norms and Systematically Observed Norms”(Japanese Economic Review, Volume 66, Issue 2, 2015)


第14章 プロレタリアと想像力への権利

入江公康

はじめに
1.感性的なものの政治
2.精気──想像(力)の条件
3.怠ける努力──ないしは「権利」として
4.美学を「間違う」──想像力、ユートピア、蜂起
おわりに

入江公康(いりえ きみやす)立教大学・東洋大学他非常勤講師 社会学・労働運動史・社会思想史等専攻
主要業績 『眠られぬ労働者たち 新しきサンディカの思考』(青土社、2008年)、『労働再審6 労働と生存権』(共著、大月書店、2012年)、『夢と幻視の宗教史 下』(共著、リトン、2014年)


第15章 市民の権利

斉藤 尚

はじめに
1.公民権運動とリトルロック事件
公民権運動 /リトルロック事件
2.リトルロック事件に関する論争
知識人たちの見解/アレントの見解/アレントの全体主義批判と公共性論/アレントへの反論
3.論争の考察
おわりに

斉藤 尚(さいとう なお)東北学院大学経済学部共生社会経済学科准教授 公共哲学専攻 博士(政治学)
主要業績 「推論的ジレンマと司法審査の正当性」(日本政治学会編『年報政治学』、木鐸社、2014年(Ⅱ))、「道徳的ルールとしてのアローの社会的選好順序」(経済学史学会編『経済学史研究』第57巻2号、2016年)


第16章 グローバル化と移民の権利

近藤和貴

はじめに:グローバル化と移民の問題
1.シティズンシップの歴史:古代と近代
2.共同体か個人か?:現代のメンバーシップ論争
3.変容するシティズンシップ
おわりに:移民と「私たち」

近藤和貴(こんどう かずたか)拓殖大学政経学部准教授 政治哲学専攻 Ph. D. (Political Science)
主要業績 『シュトラウス政治哲学に向かって』(共著、小樽商科大学出版会、2015年)、“Reputation and Virtue: The Rhetorical Achievement of Socrates in Xenophon’ s Apology” (Interpretation: A Journal of Political Philosophy, Vol. 42, No. 2, 2015)、「哲学者の英雄化─プラトン『ソクラテスの弁明』における「脱線」のレトリック」(日本政治学会編『年報政治学』木鐸社、2015年(Ⅱ))


第17章 フェミニズムの権利論

柳原良江

はじめに
1.フェミニズムと新たな問題
フェミニズムの誕生/フェミニズムの変遷/新たな潮流と問題
2.代理出産と女性の権利
代理出産の発明/代理出産の社会的位置づけ/代理出産を支える理論
3.日本における認識
変遷する議論の在処/代理出産における「生殖の自己決定権」/忘れられた「生殖の自己決定権」
4.利用可能な女性の身体
おわりに

柳原良江(やなぎはら よしえ)東京電機大学理工学部助教 生命倫理学・社会学専攻 博士(人間科学)
主要業績 「代理出産における倫理的問題のありか─その歴史と展開の分析から─」(『生命倫理』22号、日本生命倫理学会、2011年)、「収奪と利益が絡み合う卵子提供ビジネス─使い捨てられる女性たち」(『世界』11月号、岩波書店、2015年)、「カルチュラル・ソシオロジーの系譜と構造解釈学派─質的研究における理論枠組み要請への応答として─」(『現代社会学理論研究』第10号、日本社会学理論学会、2016年)


第18章 患者の権利 ──その成立史と今日の課題

勝井恵子

はじめに
1.「患者の権利」成立史
「患者の権利」以前/「患者の権利」の成立
2.今日における「患者の権利」の内容とその課題
権利の具体的内容―「患者の諸権利」として/「患者の権利」に関する諸課題/「患者の責務」とパートナーシップ
おわりに

勝井恵子(かつい けいこ)東京大学大学院医学系研究科医療倫理学分野特任研究員 順天堂大学大学院医学研究科解剖学・生体構造科学講座協力研究員 医療倫理学・科学史・教育学専攻
主要業績 「橋田邦彦研究─ある「葬られた思想家」の生涯と思想─」(『日本医史学雑誌』第56巻4号、2010年)、「橋田邦彦における「医」の三要素」(『日本医史学雑誌』第56巻4号、2010年)、「「医人」・「医行」・「格医」─橋田邦彦の「医」の思想」(『日本東洋医学雑誌』第67巻1号、2016年)


第19章 将来世代の権利

永石尚也

はじめに
1.将来世代の権利論
2.非同一性問題(Non-Identity Problem)──同じ人数の選択
3.世代に関する難問──異なる人数の選択
いとわしい結論(The Repugnant Conclusion)/ばかげた結論(The Absurd Conclusion)/辞書的見解(The Lexical View)とエリート主義
おわりに

永石尚也(ながいし なおや)保健医療経営大学保健医療経営学部専任講師 法哲学専攻


第20章 動物の権利

田上孝一

はじめに
1.種差別主義とは何か
2.人間と動物の違い
3.個体主義
4.自然の権利
5.目的的存在と廃絶主義
6.廃絶主義の実践的帰結
おわりに

田上孝一(たがみ こういち)1967年 東京生まれ 1989年 法政大学文学部哲学科卒業 1991年 立正大学大学院文学研究科哲学専攻修士課程修了 2000年 博士(文学)(立正大学) 現在 立正大学非常勤講師・立正大学人文科学研究所研究員
主要著書 『初期マルクスの疎外論─疎外論超克説批判─』(時潮社、2000年)、『実践の環境倫理学─肉食・タバコ・クルマ社会へのオルタナティヴ─』(時潮社、2006年)、『フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる倫理学』(日本実業出版社、2010年)、『マルクス疎外論の諸相』(時潮社、2013年)、『マルクス疎外論の視座』(本の泉社、2015年)、『環境と動物の倫理』(本の泉社、2017年)


権利の思想を歴史的に解明し、
混迷する現代社会における権利論をめぐる哲学的課題を提起する。

権利の哲学入門田上孝一/編著
権利の哲学入門

A5判並製・320頁 定価=本体2,500円+税
ISBN978-4-7845-1558-5 C0030

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投稿者: 社会評論社 公式ブログ - 目録準備室 -

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