「民衆の歴史を記録する仕事には、終わりがありません。」 ─松岡環/著『南京 引き裂かれた記憶 元兵士と被害者の証言』

松岡環/著『南京 引き裂かれた記憶 元兵士と被害者の証言』が発売中です。目次詳細と、著者の前書きを紹介します。

『南京 引き裂かれた記憶 元兵士と被害者の証言』
目次

はじめにかえて ─ 被害者と加害者が出会う時

第1章  揚子江河岸一帯での南京大虐殺 ─ 元兵士六名、被害者六名

1・1  松村芳治 ─ 戸板や木っぱ船で逃げる中国人を各中隊が一斉射撃
1・2  鈴木力男 ─ 河辺で逃げ切れない数千人を九二式重機関銃で連続射撃
1・3  新山薫 ─ 捕虜をいかだで流し、私が重機関銃で撃ち殺した
1・4  澤村次郎 ─ 倉庫に詰め込んだ老若男女の中国人を焼き殺す
1・5  朝熊正二 ─ 捕虜を貨車ごと河に落としたり、倉庫ごと燃やした
1・6  松井光雄 ─ 朝から夕方まで飲まず食わずで何千人も処分した

2・1  向遠松 ─ 兄と叔父を探して毎日死体の中を歩く
2・2  劉永興 ─ 下関で数千人の人といっしょに私は機関銃掃射された
2・3  駱中洋 ─ 九死に一生の中を逃げ出せた
2・4  仇秀英 ─ 火を付けられ命からがら逃げたが母親は焼き殺された
2・5  徐端 ─ 煤炭港で数百人の人が機関銃で掃射されるのを見た
2・6  季和平 ─ 河面は死体でびっしり、中山埠頭で死体片付けをさせられた

第2章  城門やその付近での南京大虐殺 ─ 元兵士六名、被害者七名

1・1  徳田一太郎(仮名)─ 中国人に頭から油をかけて焼き、銃剣で止めをさした
1・2  出口権次郎 ─ 女も子供も年寄りも皆突き殺した
1・3  沢村福治 ─ 中山門の外側の堀に死体がいっぱいあった
1・4  西川繁美 ─ 捕まえた男を並ばせて銃を撃ち、七人を貫通させた
1・5  桑原次 ─ 光華門に逃げ込む百五十名を撃ち殺した
1・6  豊田八郎 ─ 南京陥落一日目に分隊で殺した人数は五十五名

2・1  董義洪 ─ 太平門の虐殺後、大きな二つの墓を見た
2・2  倪翠萍 ─ 目の前で父母が撃ち殺され、十一歳の私も肩を撃ち砕かれた
2・3  陳文恵(仮名) ─ 野草摘みに出た少女たちと共に日本兵に輪姦された
2・4  葛道栄 ─ 日本兵に二人の叔父と伯父を殺され自分も突き刺された
2・5  王明 ─ 五台山小学校で良民証をもらいに行って捕まり男たちは殺されていった
2・6  戎秀英 ─ 強姦を逃れるため母は死のうとして水に飛び込み、祖父母、父も撃ち殺された
2・7  郭秀蘭 ─ 防空壕に機関銃掃射され、目の前で父母妹が撃ち殺された

第3章  国際安全区内やその他での性暴力 ─ 元兵士七名、被害者八名

1・1  寺本重平 ─ 天野中隊長は「強姦、強盗、放火、殺人、何でもやれ!」と言った
1・2  徳田一太郎(仮名)─ 男性は引き出し銃殺、女性は捕まえ強姦
1・3  出口権次郎 ─ 南京ではクーニャン探しばっかりやった
1・4  居付万亀男 ─金陵女子大から女の子がトラックで連れ去られた
1・5  上田熊次郎 ─ 女の子を引っ張って中隊の私設慰安所に
1・6  伊藤睦郎 ─ 女の子を何人姦ったかわからん
1・7  田所耕太(仮名) ─ 強姦はし放題、分隊でクーニャンを飼ったな

2・1  丁栄声 ─ 隠れている目の前で強姦が行われ金陵女子大へ逃げた
2・2  石秀英(三番目の娘)─ 父も兄も殺され、母も亡くなり、私たちは孤児になった
2・3  石秀英(二番目の娘)─ 日本兵が怖くてずうっと草庵に隠れてい
2・4  張秀紅 ─ 日本兵はお爺さんの腕から私を奪い取って……
2・5  周成英 ─ 連行された父の後を追うと漢中門まで死体がいっぱいだった
2・6  夏瑞栄 ─ 五台山小学校の運動場に並ばされた男たちは集団虐殺された
2・7  楊明貞 ─ 私を助け瀕死の重傷を負った父の前で私と母は凌辱された
2・8  張秀英 ─ 村に攻め込んだ日本兵に強姦され、その間生後数か月の娘が焼き殺された

第4章  南京大虐殺下の性暴力 ─ 被害者と加害兵士の証言から見る
1 はじめに
2 南京掃蕩戦に関係した日本軍の状況
3 当時南京に滞在した人々の視線
4 実際に性暴力に関係した日本兵士の証言
5 性暴力を受けた人々の証言
6 日常的に頻発した性暴力の背景
7 おわりに
【補足】 南京陥落当時の南京市の人口についての考察

第5章  企業の弾圧が私を南京大虐殺に向かわせた─松岡環の生い立ちから

■対中国侵略戦争年表


【はじめにかえて ─被害者と加害者が出会う時】(抜粋)

今から四年前、被害と加害の証言を本にして英語で出版しましょうと私に提案したのは、カナダのトロントにある「第二次世界大戦の歴史事実を維護する会」(ALPHA教育)の代表者のフローラさんとウォンさんでした。ALPHA教育は歴史事実を明らかにしようと活動している団体です。カナダの先生たちが中心になって、新しい歴史事実に目をむけて、「戦争とは何か、平和とは何かを考えさせる教育」を推進しようとする教育団体として、一九九〇年代から活動していました。私は、二〇一〇年から今年(二〇一六年)の四月まで、何度か彼らに招待されてカナダやアメリカ、香港に飛び、カンファレンスに参加したり、大学やハイスクールで南京大虐殺の調査研究の講演をしてきました。また歴史教育のために南京を訪れる彼らに何度も講演を依頼されました。

三年半もの歳月、どんな詳細な単語や文章についてもメールでやり取りをして、解説や訂正を重ねて、やっと英文版の南京大虐殺証言集『南京 引き裂かれた記憶』が二〇一六年四月に完成したのです。

私は本の証言内容をより増やし、近年調査した新しい証言者をたくさん入れようと思い、英文版原稿の証言文を編集し直しました。毎日、たった一人で証言を書き起こし、整理し、時間が経つのも忘れて集中して録音を聞き、書き起こしました。英文版出版から半年後に、ボリュームアップした中国語版と日本語版の原稿が整いました。

新刊の『南京 引き裂かれた記憶』では、加害者と被害者が、同じ時、同じ場所で、同じような南京大虐殺の体験を語っています。私が彼らから聞き取った場所は、南京と日本国内なのですが、両者の話は、一九三七年の十二月のあの時あの同じ場所なのです。お互いが全く知らないながらも同じ体験をしていたのです。加害と被害の両者の証言を突き合わすことによって、南京大虐殺の歴史事実が鮮やかに浮かび上がってきます。それを補足するのは、兵士が故郷に出した「揚子江で敵を殲滅」と書き記した手紙や「城内掃蕩で我小隊 一日で二百五十人を殺す」などと書き記した兵士の日記でした。

今、加害の側も被害の側もどちらも九十歳以上の高齢となりました。自ら明確に話すことすらできない人が増えていますし、ご家族から幸存者の訃報を耳にすることも日常的になりました。私たちが掘り起こしてきた証言や映像記録は次の世代のために残すことが本当に大事だと思えるようになりました。

私は元兵士二百五十名、被害者三百人以上を取材し記録に残しました。南京大虐殺当時若かった、生存する被害者の調査は今も続けていて、情報を蓄積しています。

民衆の歴史を記録する仕事には、終わりがありません。

二〇一六年十二月


南京引き裂かれた記憶 元兵士と被害者の証言南京引き裂かれた記憶 元兵士と被害者の証言

松岡環/著

A5版並製223頁 定価=本体2,200円+税

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加害の実態を証言する元日本兵と、被害の実態を証言する南京の市民たち。同じ時、同じ場所で、同じ事実を、彼らは反対側から目にしていた。

南京攻略に参加した元兵士250人、南京戦争の被害者300人の 聞き取り調査をした著者による記録。


 

投稿者: 社会評論社・目録準備室

【社会評論社】●時事問題に取り組む活動記録、評論、学術書、ルポルタージュほか多岐に渡る図書を発行。市民の立場から世界を見る面白さがつまった本作りを心がけています。メール book@shahyo.com